また君に番号を聞けなかった

また君に番号を聞けなかった

Date: 2013/01/09

「この食い逃げ野郎!」

皆さんは全くの他人にこんな言葉を投げつけられたことがあるだろうか。これでもかというくらいにこんもりと感情を込め、剛速球のように投げつけられる、そんな経験があるだろうか。分かりやすく言うとニュアンスとしてはジョンテンタ戦で北尾が放った八百長野郎発言にかなり近い。とにかく、かなり衝撃的な言葉だ。

長い不景気とは言え日本という国はまだまだ豊かで、飽食、そこまで食うに困ることはない世界だといっても過言ではない。昔はもっとみんな食うに困っていて、「食い逃げ」って言葉自体をよく聞いていたように思うけど、最近ではあまり聞かなくなった気がする。みんな「食い逃げ」するほど追い詰められてはいない。

では、そのあまり聞かれなくなった「食い逃げ」、そんな言葉を乱暴に投げつけられたらどうだろうか。おそらく、多くの人が「今時食い逃げって」などと一笑に付すと思うが、その次の瞬間、「そんな食い逃げみたいな真似したっけ?」と過去の自分を思い返してみるはずだ。この一瞬の思い返し、言い換えれば不安とも言える些末な種、実はこれが最も厄介なモンスターなのだ。

この現代日本に生きていて、何も心配事や不安事を抱えていない人なんていない。みんな何かしら心配だし、何かしら不安で、大なり小なり悩みを抱えて生きている。誰だって自分の行動が全て正しいとは思っていなくて、何かしら後ろめたい気持ちを抱えて生きているし、人に誇れることばかりで構成されている人間なんていやしない。誰だって何か心配だし、何か後ろめたい。

そういった漠然とした後ろ向きな何か、この気持ちが大きくなりすぎてしまうと、自分の中に生まれたとんでもないモンスターにあっという間に食い尽くされてしまうのだけど、実は、食い尽くすのは自分のモンスターだけではない。こういった人間の心の弱い部分に付け込む正真正銘のモンスターが大喜びでやってくるのだ。

その最たるものが架空請求詐欺やオレオレ詐欺(振り込め詐欺)などだ。世の中には数多くの詐欺が存在する。これらは実は大きく二つに分けることができる。人の欲望に付け込むタイプの詐欺と、人の不安に付け込むタイプの詐欺だ。

決して前者がマシだとか言うつもりはなく、どちらも詐欺であって卑劣極まりないのだけど、特に後者の詐欺は人が抱える不安の種をつくやり口で、途方もなく卑劣で卑怯極まりない、と言わざるを得ない。決して許してはいけないのだ。

その日も、その詐欺の電話は突如としてやってきた。僕の携帯電話に見慣れない番号から電話。なんじゃらほいとか思いつつ電話に出るといきなり怒号というか罵声というか、とにかく乱暴な言葉を投げつけられた。

「この食い逃げ野郎!」

言葉のアクセント的に関西系の中年男性、もちろん全く身に覚えはない見知らぬ人間だ。世界にはいろいろな電話の挨拶があって、日本では「もしもし」英語圏では「Hello」フランスなどでは「Allo」と言ったりする。けれども、どんなに世界が広くとも、いきなり電話で「食い逃げ野郎!」と罵ったりする国はない。

なんて非常識な人間だろうと思いつつも、その剣幕というか勢いというか、あまりの自信満々っぷりというか豪快さに、こちらも自信がなくなってしまう。なんだか完全に向こうの言い分が正しいといいう錯覚に陥ってしまう。もしかしたら僕は食い逃げをしてしまったのかもしれない。

「く、食い逃げですか?」

そうなると返答もしどろもどろになるもので、例えば最初からこの瞬間に食い逃げと罵倒される電話が来るぞって分かってて準備できてたら違った対応ができたのでしょうけど、なにせ僕、パソコンを「.jpg」で検索して、自分でも忘れているおっぱい画像とかないかなーって悶々としていたくらいですからね。全く心の準備ができていない。

「そう、食い逃げ。あんまり食い逃げみたいな真似しなさんな!」

もう完全に食い逃げしたと決めつけられてしまってるんですけど、さっぱり話が見えません。もう僕もどうしていいのか分からない状態になっちゃいましてね。

「この間のソバ屋でお金が足りなかった件は、あとでちゃんと払いにいきました!」

見知らぬオッサンにソバ屋でお会計の時に財布を開いたら48円しか入っていなかった事件の顛末を赤裸々にカミングアウトする始末。あの時の清楚そうなソバ屋店員の女の子の表情が忘れられない。とにかく、なんで電話口で「食い逃げ!」とか罵倒されているのか全く分からないのですけど、その理由が次に判明します。

「あのね、もう記録もデーターも録音も全部収集済みだから。職場やおウチに送りますよ!」

「それじゃあね!食い逃げ野郎!言っとくけど食い逃げって犯罪だから!」ガチャ!

電話口の男は勝ち誇ったようにそう言い、拍子抜けするほどアッサリと電話を叩き切ったのでした。なるほど、これで全てが理解できた。つまりのところ、これは形を変えた詐欺なのだと。怪しげなエロサイトとかそういった類なものを利用したくせに料金を払ってないんだろう、それを遠まわしに表現したものが「食い逃げ」だったのです。

こういったエロサイトを巡る架空請求や詐欺的請求は、時流に合わせて刻々と姿を変えてきました。もともと詐欺というのは、その手法が広く知れ渡ってしまうと全く効果がなくなってしまうものですから、その時代に合わせて姿形を変えていくものです。ある意味、詐欺とは生物の進化に近い。いやむしろ薬剤と病原菌の関係に近いのかもしれない。永遠のいたちごっこなのだ。

この電話の新しいところは、「食い逃げ」という遠まわしな表現を使っていることろだと思いがちだが、実はそうではない。確かに今までだったら「アナルスパークってエロサイト使っただろうよー」とかドスがピリリと効いた声で言ってきて、決して「食い逃げ」などと遠まわしな表現はしない。けれども別にその辺はどうでもいい。どうせ業者が浅はかな考えで思いついた詐欺にならない文言とかそんなとこだろう。問題はもっと別のところにある。

それが、「請求されていない」という部分だ。これまでだったら、二十万円払えだの、今日中に払わないともっと高額になるだのなんだのと、とにかく金を要求する電話がほとんどだ。けれども、この電話はそのような請求はない。ただ「食い逃げ野郎」という罵倒と、データを職場に送るという良く分からない脅しだけだ。

実はこれが非常に厄介で、明らかにこういった詐欺は、今までのような直接的な脅しから間接的な脅しへと移行してきた。早い話が、金の請求をされないほうが恐ろしいし不安である。そうやって人の心の中に巣食う不安という小さな種にダイレクトアタックを働きかけてくるのだ。

昨今では、架空請求などの話が一般化され始め、多くの人がこういった詐欺的請求が蔓延しているということを知っていれば、正直に払う必要がないと知っている。つまり、「二十万円払えや」と請求された方が、ああ、これは架空請求なんだ、ほっときゃいいや、と納得でき、安心するのだ。

しかしながら、人間は得体の知れないものを恐る習性がある。いきなり食い逃げと罵倒され、データーを職場に渡すと言われ、金を請求されるでもなく電話が切られてしまう。これはもう言い知れぬ不気味さがある。落ち着いて考えれば、これもそういった詐欺と全く変わらないのだけど、突然の電話にとっさに対応できる人はそうそういない。

おそらく、この後の展開としては、不安の種が成長し芽が出た人が発信元の番号に電話するだろう。そこでデーターを消して欲しければいくら払え、などと金の請求が行われるはずだ。電話をしてきた人はなにかやましいことを心に抱えている人ということなのだから、かなり効率よく金を毟り取ることができる。

食い逃げ野郎!と爆撃のように数多くの人間に電話して、電話を切る。不安に思った人だけがかけ直してきて、じっくりと金の請求ができる 。かなり効率的。なんとも色々と考えるものだ。

こういった電話がかかってきた場合、皆さんも冷静に対処していただきたい。例えば訳の分からない番号からの着信だった場合、電話番号検索 http://www.jpnumber.com/こういったサイトで番号を検索してみるといい。ここでは皆が電話番号に対してクチコミを登録しているので、詐欺的電話なら一発で分かるようになっている。くれぐれも冷静な対応を。

とにかく、件の食い逃げ野郎電話も検索してみたら思いっきり架空請求業者として登録されていり、それもかなりの猛威を奮っているみたいで相当数の登録があった。「いきなり罵られました」とか数多く登録されていた。

とにかく、なんだか面白そうなので電話してみることに。いきなり食い逃げ野郎と言われてすごく心配になっている感じで電話してみた。

「あの、もしもし」

「はいはい、どうしましたー」

先ほどとは明らかに声が違う男が電話に出る。なんだか余裕綽々といった感じの態度で、ものすごくイライラする。複数人の人間が電話対応にあたっているということは、なかなか大きな組織のようだ。個人がイタズラでやっているレベルじゃない。

「さっき、食い逃げ野郎とか電話が来たんですけど」

「あー」

何が「あー」なのか全然分からない。相手の背後には何やらザワザワとした喧騒のような音声が聞こえていて、かなり大掛かりなオフィスでやっていることが伺える。電話口の男は余裕といった口ぶりで続けた。

「あのね、食い逃げって犯罪なの、わかってる?」

すごい自信満々に言ってくれちゃってるんですけど、正確には食い逃げは犯罪ではない。「食い逃げ」という罪はないのだ。あくまでもお金を払う気もないのに料理を注文したという詐欺罪でしかない。つまり、注文時はお金を払う気があったのに、会計の時になって何らかの理由で払わないと心に決めた場合、厳密には詐欺罪は適用できない。騙す気があったかどうかというのが焦点になるので、食い逃げ=犯罪とするのはいささか乱暴なのだ。とまあ、そんなこといっても始まらないので、適当に対応を始める。

「僕としてはソバ屋でお金が足りなかったことはありましたけど、すぐにお金下ろして払いに行きましたし、食い逃げとかでは絶対ないです」

必死に弁明すると、電話の男はフッと笑った後に言葉を続けた。

「あのですね、そういうことじゃないの。食い逃げってのは例えなの。わかってる?」

「例えですか?」

「そう、例え。アナタ、アダルトサイトを利用したでしょ?利用したのに料金を支払わない、それって食い逃げと同じでなの」

「はあ」

呑気な反応とは裏腹に、心の中ではキタキタキターって感じでした。そして遂に電話の男はあの言葉を口にします。

「延滞料もついてますんで、8万円を本日中にお振込ください」

まさかこんな理不尽な請求をされて安堵を得る日が来ようとは思わなかったけど、やっとこさステレオタイプな請求をされて、完全にこれが詐欺だと分かって安心。ソバ屋が怒り狂って僕の電話番号を探し当てて電話してきたんじゃないと判明して安堵したのです。

「わかりました。じゃあ本日中に振込みますね。ご迷惑かけて申し訳ありません。もし、御社が嫌でなければ、今後も御社のアダルトサイトを利用させてください」

と丁寧に伝えて電話を切ります。まあ、払う気持ちは一ミリもないんですけど、こう言ってたほうが後々面倒がなくていい。いや、この時は確かに払う気持ちはあってこう言ったんですけど、そのあと急に面倒になって払う気持ちがなくなった、ということにしておきます。

さて、食い逃げ電話がトラディショナルな詐欺であるということが分かって非常に安心したのですが、やはりというかなんというか、あまり良い気持ちがするものではありません。それは多くの方が同じだと思いますが、いきなり電話で罵倒されるなんて気分がいいものではありませんし、しかもそのやり口が、誰もが心の中に抱えている不安の種や、後ろめたい気持ちなどに訴えかけてくるものですから、モヤモヤとした嫌な気持ちが心の中に残るものです。

例えこれが完全な詐欺と分かっていて、無視していればいいなんて分かっていても、何やらスッキリしないものが心の中に残ります。そして、やり場のないイライラや怒りへと姿を変えるでしょう。人の心の不安に訴え掛ける詐欺手法、本当に卑劣だと思います。

やはり僕も、その時は本当にイライラして、詐欺業者に電話をかけまくって「脳ミソ煮るぞ!」とか罵声を浴びせかけたい気持ちに駆られたのですが、別にそれって何も解決しないんですよね。けれども、こうしている間にも悪徳業者が多くの人の不安に付け込んで悪事を働いていると思うと、気が気じゃなかったのです。

どうしたものか。一体どうしたものか。このモヤモヤをどこにぶつけたら良いのだろうか。そんなことを悶々と考えながら「.jpg」ではおっぱい画像が発掘されなかったので「.jpeg」に変えて検索をしていると一つの衝撃的な事実に辿り着いたのです。

「詐欺業者には不安はないのか?」

こういった詐欺電話などを受けると、相手はものすごい列強で、完全無欠で冷酷な人間を相手にしていると思いがちで、不安だとか心配だとかそんな感情とは無縁な人と錯覚しがちですが、実際にはそうではありません。相手だって同じ人間なのです。生身の人間なのです。僕らと同じように心配事も後ろめたい気持ちも存在するはずなんです。

まあ、彼らは完全無欠の詐欺という犯罪行為を行っている自覚はあり、それでも堂々とやっているくらいですから後ろめたい気持ちなんてのは微塵も存在しないでしょうが、やはり不安の種くらいは確実に存在しるはずです。じゃあ、その不安の種を付いてみたらどうなるだろうか。向こうがこちら側にやってくるようにこちらから業者側の不安の種を責め立ててやったらどうなるか。最初はそんな軽い気持ちからでした。

じゃあ、業者側が不安に思う事ってなんだろうって考えると、やっぱり「警察に逮捕される」という部分に行き着くんですね。どんなに業者がアウトローの集団であろうと、警察に逮捕されたら嫌だなって気持ちが少なからずあるはずです。ならばこちらはそこを突いてあげましょう。

かといって、僕がいきなり電話をして「警察だ」などと名乗るなんてのは論外で、いろいろと問題を含む可能性が多分にあります。そういった虚言を用いる方法ではなく、あくまで捜査が迫っている感じを匂わせるイメージで業者の不安を突っついてみようと思います。

まず、問題なのは電話番号です。普通に携帯電話からかけても良いのですが、もう僕の番号は割れてしまっているので今回の作戦には使用できません。試しに番号非通知でかけたらしっかりと着信拒否されてました。なんてチキンな。どうしたものかと悩んだのですがふと思い立って公衆電話から電話してみたら拒否されていないみたいで繋がったので、これを利用しようと決断、大量の十円玉を用意します。

事前のリサーチで、この詐欺業者は様々な名前を駆使して詐欺電話をかけまくっていることは分かっています。「高田、大槻、水田、山本」これらの名前を担当者として駆使してやりまくってますので、まずはこれを使ってみましょう。電話をかけます。

「もしもし」

「あー、そちら、高田さん、大槻さん、水田さん、山本さんっておられますかいな?」

イメージとしては、強面だけど人情に厚い地方都市の刑事みたいな感じで切り出してみました。お前らが使っている担当者名はこちらで掴んでいるぞ、確認の電話をしたぞって感じでやってみました。

「……はい、どちらさまですか?どういったご用件ですか?」

一瞬だけ躊躇いを見せる電話口の男。効いてる効いてる。

「要件もなにもないですがな!本官、おっと間違えた、私も好きで電話しているわけではないですわ!」

そんな感じで話していると、慌てた感じでガチャリと電話を切られてしまいました。効いてる効いてる。

これは予想以上に面白くてすぐにでも第二弾第三弾といきたいのですが、あまり間隔を置かずにやっても真実味が薄れてしまいますので、ここはグっと我慢。数日開けて第二弾の電話をしました。

今度はより真実味を持たせるためにあらかじめ録音しておいた市役所窓口での喧騒をipodに入れておき、電話ボックス内で大容量で再生しました。イメージ的には警察署内の騒がしい刑事二課から電話をかけているイメージです。

「もしもし、高田さんはおりますかいな?」

別に何の恨みもありませんが、担当高田さんにターゲットを絞ります。もちろんバックには署内っぽい喧騒が。

「高田に何の要件でしょうか?」

電話口の男は余裕といった感じで受け答え。まだ分かってないみたいなので捜査の手が迫っている感じを醸し出してみます。

「いやね、ちょっとお話を聞きたいことがありましてな。(おい、例の事件、ちゃんと裏をとったんか!)」

タイミング良く録音していた音声が流れてくれたので、臨場感バツグン、かなり不安の種に訴えかけることができたと思います。けれども、ここまで僕が熱演しているのに、全然伝わってないみたいで、

「いまちょっと高田は席を外しております」

とキッパリ。仕方がないのでもっと臨場感を出すために、電話中なのに我慢できずに別の刑事に指示を出す感じで少し受話器を押さえて熱演を始めました。

「おい、ヤマさん、あのペニーオークションを紹介した芸能人ブログの件、どうなった?」

これでそういった詐欺的事件を扱っている場所と印象づけられたみたいです。それでハッとしたのか、ペニーオークションにビビったのか、相手も焦って電話を切ります。効いてる効いてる。

その数日後には、今まさに警官隊が詐欺事務所に突入するかの如き臨場感で電話をかけ、電話に出た瞬間から

「配置につきました。時刻ハチマルマル、いつでも突入できます。やべ、間違えてターゲットに電話しちゃった」

とか訳の分からんことになってました。効いてる効いてる。

これで詐欺業者にも「実際に警察が動いていて逮捕されるかもしれない」という不安を植え付けることができました。自分たちがやっている不安につけこんだ脅し的詐欺がどれだけ悪質な行為なのか身を持って分かってもらえたと思います。

最後の仕上げとばかりにもっと大規模な組織が動いていると印象づけてやろうと思って

「日本に入ってきたFBI捜査官は何人ですか、レイベンハー」

みたいな感じで設定も背景も全然意味が分からない、誰も得しない電話をしたら、すごい相手の業者の方が激怒されましてね、ものすごい剣幕で怒られちゃったんです。

「てめー、いい加減にしろよ。毎回毎回公衆電話から変な芝居がかった電話かけてきやがって!殺すぞ!」

全部バレてました。効いてない効いてない。

仕方ないので、人の不安に付け込むような詐欺は非常に悪質である、不愉快なのでやめて欲しい旨を伝えると、

「お前、公衆電話からかけてきてやがるけど、ウチの詐欺にひっかかったやつだな?だから腹いせにこんなことしてるんだろ?絶対見つけ出して殺すからな!」

相手も興奮しすぎて自分で自分のこと「詐欺」って言っちゃってるんですけど、すごい剣幕で怒ってるんですよ。もしかしたら、本当に捜査の手が忍び寄ってるかもって不安に感じたのかもしれません。だからこんなに怒ってるのかも。

「とにかく、こんなことしていたらいつか逮捕されますよ!」

みたいなことを老婆心ながら忠告すると、相手は捜査の手ではなかったという安心感でスパークしてしまったのかものすごいテンションで

「ばーか!こんなので逮捕されるわけねーだろ、おまえ絶対見つけ出して殺すからな!」

みたいなこと言われました。それからも一日おきくらいに、色々な設定で電話をかけ続け、もう面倒なので個人的に携帯番号を聞き出してプライベートな感じで会話したいなって思っていたんですけど、肝心の設定の方が、もう操作の手とか演出する必要がなくなっちゃったので訳分からんことになっちゃって

「お友達から教えてもらったペニーオークション、なんと高級加湿器を238円で落札できちゃったの!すごいよー!よかったら高田もやってみてね!」

とか訳のわからん設定で電話しまくっていたら、すぐに電話を切られちゃって、なかなか電話番号を聞くに至らず、二週間後くらいには、その業者に電話がつながらなくなってました。

それからしばらくしてでした、寂しい思いを抱えつつ、あの業者の彼の「ばーか!こんなので逮捕されるわけねーだろ」という言葉がリフレインしていたのですが、ネットニュースを見ると、その詐欺業者がキッチリと逮捕されていました。こんなので逮捕されてた。

誰しもが少なからず心の中に抱えている不安、その感情に付け込む詐欺は最も卑劣な行為です。皆さんは不安に思うことを恥じてはいけない。人間は不安な気持ちを抱えていて当たり前なのだから。恥じて隠そうとするから付け込まれるのだ。

僕のことを見つけ出して殺すとまで言ってくれた業者の人、そう言ったにも関わらず多分逮捕されてしまった業者の人。宣言したのに実行しないなんて食い逃げみたいなもんじゃないか。僕の方こそ彼に「食い逃げ野郎」と言ってあげたい。

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