ある日・・・

ある日・・・

Date: 2012/05/06

朝起きて適当にご飯食べて仕事に行って、なにやらヒソヒソと陰口を叩かれて適当に切り上げてラーメン食って帰ってオナニーして寝る。見紛う事なき僕の日常で我ながら吐き気がするほどクソな毎日の繰り返しだと思うのだけど、明日からこの日常が送れないとなった場合、それはちょっと嫌というか困る。クソな日常であってもなくなると困るのだ。

みながみんなそれぞれに大切な「日常」ってやつがあって、無意識のうちにそれを守ろうとしているのだけれど、その大切な日常がいとも簡単に崩れ去りうる脆くて危ういものだということにはあまり気が付いていない。

例えば、毎日仕事から帰ってプロ野球見ながらビールを一杯、なんてのが大切な日常であるお父さんも帰りの電車で手を掴まれて「この人痴漢です」と爬虫類みたいな女に叫ばれるだけで崩壊する。もしかしたらもうそんな日常は送れないかもしれないのだ。

こんなこと言ってしまっては言葉が悪いかもしれないが、天災や人災などの不可抗力的事象だって日常を破壊する大きな要因だし、そこまで大規模でなくてもちょっとした悪意、ちょっとしたすれ違い、思い違い、そんな些末なことでこの日常はいとも簡単に崩壊するのだ。

そして、それらの崩壊は最も日常が日常らしい時、本人は気付いてないかもしれないが、最も幸せな時に訪れるものだ。今日はそんな話をしたい。

あれは僕がまだオナニーを覚えたてのルーキーだった中学生時代のことだった。全国的にそうだと思うけど中学ってのは良く分からない風習というか風土が蔓延しているものだ。今思い返してみるとなんであんなことしてたんだろうと思うことが多々あるのだけれど、当時の自分たちは至って真剣だったりするのだから始末が悪い。

そんな中学のおかしな風土の一つに、我が校では体育祭のハチマキ伝説というものがあった。これは、年に一度開催される体育祭の時にクラスでお揃いのハチマキを自作して装備し、体育祭終了後には女子が密かに恋心を寄せる男子のハチマキを貰い好いただの何だのやりはじめる行事だった。

今考えるとアホじゃねえかって思うし、そんなハチマキくださいって言われるよりもフェラチオの一つでもしてくれた方がいくらか恋も成就しやすい、中学生なんて性欲の塊っすからね、全然いけるって思うのですけれども、当時の僕らは真剣で、体育祭の終わった後などハチマキ持った男子がなかなか帰らずウロウロしているものだった。

そしてある年のこと、その年も体育祭の開催が近づいてきて男女共に色めきだってきました。ちょうどバレンタイン前のヌルッとしたざわめきとでもいいましょうか、そんな男女間の機微みたいな甘酸っぱい何かがあったのです。

ここまで、この男女の一大イベントをまるで他人事のように書いてきましたが、そりゃそうで、もちろん僕にとっては他人事で、ハチマキをくださいって女子に言われたことなんてなくて毎年キッチリとハチマキを家に持ち帰っていた僕には非常に関係ない話で、ハチマキだって母ちゃんが洗濯物を干すのに使っているくらいでした。

本当に完全に他人事で、全くと言っていいほど体育祭にもハチマキにも、もちろんそのあとの恋愛イベントにも興味がなかった僕だったのですが、ある年だけ、どうしてもハチマキに関わらなくてはならない、そんな事態が巻き起こったのです。

なんてことはない、ハチマキ係に任命されただけで、体育祭に向けてクラス全員分のハチマキを準備する責任者みたいなのになってしまったのです。まあ、責任者といっても実際に縫ったり切ったりして裁縫するのはクラスの女子全員の仕事でしたので、まあ、僕の仕事はハチマキに使う布を買いに行くくらい。その布だってあらかじめ色やなんかはクラスの話し合いで決定していますから、完全におつかいをするだけ、みたいな状況でした。

そんな面倒くさく、しかもやりがいもクソもない仕事を割り振られ、おまけにハチマキに対する思い入れもほぼゼロ、そんな僕がテンションあがるわけもない、と思ったのですが、意外や意外、僕のテンションはだだ上がりで、とにかくこのハチマキ係をやり遂げる、そんな熱意に燃えていたのです。

実は、このハチマキ係、男だけだと訳の分からん蛾みたいな色合いのものを作るし、女子だけに任せても異様にメルヘンチックなお花の国の王女様みたいなのが出来上がるため、男女ペアでやってバランスを取るのが慣習みたいになっていました。そして、僕ともう一人任命された女子が僕が密かに恋心を寄せる女子だったわけで、否応にもテンションが上がったわけなのです。

ハチマキ係を決めるクラスでの話し合いと、色とかを決めるクラスでの話し合いが終わった後、僕らは二人教室に残りました。この時点ですごい良い匂いとかしていて僕はもうギンギンに勃起していたと思います。若いですね、中学生ですもの。とにかく、この好きな子と僕はハチマキ用の布を買いにいかなければならないのです。

「電車に乗っていかなきゃいけないね。今度の日曜日行こうか?」

少し照れくさそうに笑いながらそういう彼女の笑顔を見て、僕は確信しましたね。母ちゃんすまん、今年はハチマキ持って帰れそうにない。洗濯物は別の紐を使って吊り下げてくれ、そう確信するに至ったのです。今年の体育祭は何かが起こる。きっとこの恋が実る。

僕の住んでいた町は、たぶん現代の都会っ子とかがホームステイに来たら三日目に自殺しちゃうんじゃないかってレベルの微妙な田舎でしたので布を買うには汽車に乗って隣の町まで行く必要があったのです。

僕ら中学生にとってその隣町に行くってのはある種のステータスで、ちょっとおませなかっぷるや、かっこつけたい男子グループなどが休みの日に隣町に遊びに行く、それが約束された上位ヒエラルキーのムーブメントだったのです。

僕もついにその休日に隣町まで遊びに行くステージに到達したか、それも好きな子と一緒にだ。これはもうデートだ。デートに違いない。果たして布を買うだけで済みますかな!みたいなことを妄想し、前日などは眠れなくて眠れなくて仕方がなかった。

そしていよいよ当日、起きてみてビックリしました。遅刻確定とまではいいませんが本気で急がなければ遅刻してしまうかなり切羽詰った時間帯に目覚めてしまったのです。いくら興奮して寝付けなかったとはいえ、こんな晴れの日に寝坊とはありえません。

「なんで起こしてくれなかったんだよ!クソババア!」

1ミリも悪くない母さんに悪態をつくところなんて本当に中学生らしくて微笑ましいのですが、とにかく急がねばなりません。彼女との待ち合わせは駅、急いで準備して全速力で向かえばギリギリ間に合う。今のように携帯電話などない時代ですから遅刻はご法度、おまけに田舎で汽車を一本逃すと次いつ乗れるか分かったものじゃありませんから、とにかく遅刻だけはできないのです。

当初の予定ではちょっと髪型とか決めて行ったりするはずだったのですが、そんなものは全て省略、急いで家を出ようと身支度を整えていると、神の悪戯とも思える不幸が巻き起こったのです。

「ウンコしたい……」

いつも大切な場面でウンコがしたくなり幾多の人生におけるチャンスの芽を踏み潰すことになる僕でしたが、さすがにこの時ばかりはありえないと思いました。大好きな子と待ち合わせ、時間ギリギリ、その場面での便意、無視して待ち合わせに向かおうものなら途中で出る、けれどもゆっくりウンコなどしていたら本格的に待ち合わせに間に合わない。

迷いに迷った僕は決断しました。一瞬でウンコを全て出し光の速さで待ち合わせに向かう。もうそう決断したら行動は早く、ドアを蹴破る勢いでトイレにインし、便器に座るのとズボンとパンツをズリ下げるのがほぼ同時、しかも座った瞬間にビビビビビブですよ。よし、瞬殺でウンコを出すこと成功した。まだ間に合う。急いで尻を拭こうとした瞬間ですよ。

「紙がない」

いつもは誇らしげにトイレットペーパーが咲き誇ってるであろう場所にトイレットペーパーのカケラすら見当たりませんでした。ただ茶色いトイレットペーパーの芯だけが哀愁を漂わせて佇んでいました。やばい、このままでは間に合わない。ただでさえ1分1秒を争っている場面なのに、ここでドアを半分だけ開けて手だけ出して「母ちゃん紙ー」なんて要求している時間はない。耳が遠くてトロい母さんのことだ、紙を用意するのに天文学的時間がかかるに違いない。

僕は今でこそ人間の進化のためにウンコの後も尻を拭かない、そう宣言して痔になった男ですが、当時は悩みましたよ。このまま尻を拭かずにウンコを終える?そのままデートに?さんざん悩みましたが、それでも遅刻するよりはマシと判断し、そのまま拭かずにパンツとズボンを吐き、待ち合わせ場所へと直行したのでした。

鬼神の如き形相で自転車を漕ぎ、競輪選手みたいになりながら地元の駅に到着。秒単位のギリギリさでなんとか彼女と会うことができ、予定していた電車にも乗ることができたのです。危なかった、紙を探して尻を拭いていたら間違いなく間に合わなかった。僕の判断は正しかった。

「大丈夫?すごい汗かいてるよ?」

もう秋口になろうかという涼やかな季節であるのに、車内ではハァハァ言って汗をブシュブシュ噴出させている僕を気遣う彼女。その姿はまさにエンジェル。こんな可愛く優しい女の子とデートに隣町まで行く僕、母さん、今年はハチマキ持って帰れそうにないわ、あとトイレに紙補充しといてや。

車内は非常に空いていたのですが、なんだかボックス席に座るのが気恥ずかしかった僕らはそのままドア付近で立ちながら談笑、この辺も非常にスムーズでしてね、この僕がこんなにも女子と軽やかに会話ができるとは思いもしませんでした。

1時間が経過するとついに汽車は目的の駅に到達。やはり地元と比べてかなり都会で圧倒されるものがありました。完全に打ち解けていた僕と彼女は目的の布ショップを目指してアーケード街を歩いていたのですが、そこでとんでもない事件が巻き起こったのです。

尻の穴が痒い。

もう、普通に痒いとかのレベルではなく、下手したら狂うんじゃないか、なんか小さい小人みたいなのが槍もってケツの穴を暴れまわってるんじゃないかって痒さだった。とにかく尋常じゃないレベルで尻の穴が痒かった。

やはりというかなんというか、出掛けにウンコして拭かなかったじゃないですか。その時に周辺に残っていたウンコが硬化して乾燥し、とんでもない痒みを演出し始めたのです。この痒みが分からない人は、ウンコした後に尻を拭くのをやめてみたらいい。

ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。ケツが痒い。

アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。 アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。アナルが痒い。

さっきまで好きな子と楽しいデートをしていて

「ほんとだよ、マリオだって4面まではいけるんだから」

「あ、4面からワープできるよ」

みたいな会話をしていたのに、今や考えるのはアナルのことばかり。

「でね、4面のトゲトゲのやついるでしょ?」

(アナルアナルアナルアナル)

「どうしたの?」

「いや」(アナルアナルアナルアナル)

完全に心ここにあらずですよ。全てをアナルに支配された中学生の姿がそこにあったのです。とにかく尻を掻き毟りたい、許されるのならばズボンを脱いで今ココで掻き毟りたい。釘抜きみたいな道具でガリガリとやったりたい。尻こ玉が抜ける勢いで掻きたい。ウザい、横で楽しそうに話しているこの小娘がウザい。いいよな、お前はアナルが痒くなくて。何が4面のトゲトゲのやつだ、そのトゲでアナルかきむしりたいわ。

「それで、この間先生が言うんだけどー」

本当にこの小娘がうざったい。ちょっと黙っててくれないだろうか。っていうか尻の穴をかきむしってくれないだろうか、そんな感じ、たぶん並の精神力の人間だったら精神崩壊していると思う、それくらい痒かった。

布ショップに到着後も考えるのはアナルのことばかり、ここに展示している全ての布でアナルを拭きたい、摩擦で煙が出るくらいダイナミックに拭きたい。拭きたい拭きたいアナル痒いアナル痒い。

「オレンジ色なんだけど、サテンと普通のどっちにしよっか?」

なんて二種類の布を手のとって彼女が言うんですけど、普通のヤツの方が良く拭き取れそうだとしか思えず、心ここにあらずといった状態でした。そのうち彼女の顔すらウンコがこびりついたアナルみたいに見えてきましたんで、もう色々と限界と悟り、布ショップを出て隣のボンタンとか売ってる不良ファッションショップのトイレに駆け込み、トイレットペーパーを使って何度も何度も、痒みが収まるまでアナルを拭き続けたのでした。そういった動きをするカラクリ人形のように。

これってすごい不思議なんですけど、アナル周辺で一度乾燥したウンコって本当に頑固で、拭いても拭いてもうっすらと紙に茶色い軌跡が残るんですね。とにかく、もうあんな思いをするのだけは嫌だ、せっかくのデートを楽しみたい、そんな一心で何度も何度も尻を拭きました。

どれくらい拭いていたか分かりません。とにかく満足し、店を出ると、布ショップの店先で彼女が布を持って所在無く佇んでいました。どうやら僕の姿が見えないのでもう自分の判断で布を購入してしまった様子。本当はこの後、適当に理由をつけて彼女と本格的デートになだれ込もうと企んでいたのですが、本日のアナルコンディションでそれは危険、またいつ痒みが再発するか分かりませんから、早急に帰宅する必要があります。

というか、駅に向かう道中、何度も我々の前に立ちはだかるノストラダムスのように早速アナルが痒くなり、絶望したのですが、もうなりふり構ってられないのでズボンの上からパンツの上から、彼女に気づかれないのようにアナルをかきむしっていたのですが、もうね、指がすごくウンコ臭くなるのね。

しかも帰りの汽車の中で、彼女が、「買った布、大きさ大丈夫かな?ちょっと広げてみよ。pato君、はじっこ持ってて」とか、スロット屋にいるニット帽のガキ軍団くらいウザいこと言い出しましてね、汽車の中で布を広げやがるんですよ。僕も布を持つのを手伝ったんですけど、明らかに指からウンコの匂いするでしょ。

「いや、この布では拭いてないよ」

とか訳の分からないことを弁明するのが精一杯で、明らかに思いましたね、この恋終わったな、と。

とにかく、日常とは脆いものです。好きな子とデートなんていう一大スペクタクル、最も守りたいであろう一大イベントであっても、ウンコをして尻を拭かなかった、それだけでいとも簡単に崩壊するのです。大切さに気付いていない日常なんてどれだけ壊れやすいか。どんなクソのような日常だって、きっとあなたにとっては大切な日常なのです。それを噛みしめ、守るべく行動するべきなのです。

ちなみに、ハチマキは完成し、もちろん体育祭後に誰にも貰われなかった僕のハチマキですが、あの悲劇を繰り返さぬよう、トイレにでもぶら下げて尻を拭くのに使おうとも思ったのですが、ツルツルしたサテンの素材だったので、ちょっと拭きにくそうでしたら。だから拭きやすい普通の布がよかったのに。

(2004年5月20日の日記をリライト)

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