ハリー・ポッターと謎のプリンス

ハリー・ポッターと謎のプリンス

Date: 2009/07/27

さてさて、既にシリーズ何作目かも忘れてしまいましたが、巷ではハリーポッターの新作映画が話題のようで、なんか「物語はいよいよクライマックスへ!」などとガシガシとテレビCMなどが流れています。

そうやってハリーポッターの新作映画が公開されると思いだすのが「ハリー&ポッター、見てもないのに映画レビュー」なわけで、1作目からずっと公開に合わせてハリーポッターシリーズを1ミリも観ていないのに内容をレビューするという荒技に出ていたものでした。

凸凹刑事コンビハリーとポッターが巻き起こす痛快アクション活劇は多くの支持を得、「賢者の石」では巨大企業を相手に、「秘密の部屋」では謎の殺人事件を相手に、「アズカバンの囚人」ではネット宗教という新たな形態の宗教を壊滅させ、「炎のゴブレット」ではベトナム戦争の悲劇によって巻き起こった壮大な復讐劇を阻止しました。ハリーとポッターの活躍は凄まじく多くの感動を我々に届けてくれたわけなのです。

そして前作の「不死鳥の騎士団」ではちょっと不思議な、タイムスリップにまつわる事件を描きました。この作品を公開するや否や、読者の皆様の反響たるや凄まじく

「面白かったです!感動しました!」

という賞賛が1名より。

「つまらない、死ね!」

という率直かつ的確な意見が12名より。

「ハリーポッターをバカにするやつは許さない!謝罪してください!」

なぜかすごい怒ってらっしゃる方が2名。

「ハーマイオニーたんの胎盤食べたい!」

頭が狂ってらっしゃる方が1名。

合計で16名の方からの反響メール!あまりの量に僕のメールボックスがパンクするかと思いました。このシリーズに対する読者の皆様の関心の高さが伺えます。

そんなこんなで、やはり今回もやってきました。7月15日より日米同時公開が始まったハリーポッターシリーズ最新作「ハリー・ポッターと謎のプリンス」、なんでもテレビCMを見る限りではこれは完結編の1個前のものらしく、ここからラストに向かってクライマックスが始まるとか。というわけで、「見てもないのに映画レビュー:ハリー・ポッターと謎のプリンス」をどうぞ!クライマックスはここからはじまる!

見てもないのに映画レビュー
「ハリー&ポッターと謎のプリンス」


オープニングは冬山から。おそらくチョモランマとかそういった類の世界的な高山だろう。フル装備をした一団が、数にして10人程度の一行がトボトボと延々と続く真っ白い斜面を登っていく。

吹雪はより一層強くなり1メートル先も見えない状態に。一団の先頭に立つ謎の男が顔を覆う真っ白な雪を払いながら「クッ!」と呟く。サングラスを覆った細かい雪を払うと、男の視線の先に奇妙な氷柱が映った。

「あれだ!」

先頭の男が後に続く一団に指示する。しかし、猛吹雪のためかその声は届かない。仕方なく先頭の男が滑る足元を顧みず氷柱に駆け寄ると、一団も氷柱の存在に気付き、一斉に走り出した。

真っ白い息を吐きながら氷柱に駆け寄る男。近づくと、やはりその氷柱はデカく、ゆうに5メートル以上ありそうなものだった。先頭の男以外の一団は、ざわざわとリュックから様々な計器を取り出し、大きさを測ったり雪の中に何かの電極を突き刺したり、放射線測定機みたいなのを取り出して慌ただしく動いている。

先頭の男は、氷柱の表面にこびりついた雪を手で拭い取る。厚手の手袋がガサガサと音を立てるが、かなり強固にこびりついているのかなかなか取れない。男はさらに力を込めて削り取るように表面の雪を取り去った。

次第に白濁した雪が除去され、透明な氷柱の表面が見え始める。男がさらに氷柱の中の存在が露わになり始めた。

「おい!」

男が一団に声をかける。一団は慌てて計器類を雪の上に置き、皆で一斉に雪を削り落し始めた。徐々に露わになる氷柱。それは氷柱の中で氷漬けにされた人間のようだった。足が見え、手が見える。余程の恐怖なのか、手は何かを訴えかけるかのような形で固まっている。

「くっ」

件の男が狂ったように表面を削る。するとついに氷漬けにされた人間の顔が明らかになった。

ダーン!

それは断末魔の表情で硬直するポッターだった。一団が慌ただしく動き、さらに計測を続ける。その中心で男がサングラスを取りながら口を開いた。

「ポッター……」

その男とはハリーだった。

ブワっとカメラアングルが引き、氷柱と一団を小さく映す。雪山は雄大かつ白銀の世界を映し出しているが、さらにカメラが引いても、銀世界は変わらない。それどころか、グーグルアースみたいに地球全体を映すまでカメラが引いても、陸地の部分は真っ白なままだった。そう、地球全体が真っ白。一体何が起こったのかドキドキしていると、その真っ白な地球をバックにデデーンとタイトル表示。

「ハリー&ポッターと謎のプリンス」

場面は変わり、今度は緑豊かな地球の様子。またグーグルアースのように、今度は逆にブイーンとアップになっていき、アメリカのロサンゼルスをクローズアップする。

「なんだ!?チャイナタウンで殺し?」

「窃盗は他の課に連絡してくれ!」

「おい爺さん、電車賃貸してやるから早く帰れ!」

「いつもすいません、旦那」

「おい!誰か交通課の応援に行ってくれ!」

怒号が飛び交う喧騒のロス市警内。次々と警察署内の面々を映しながらスタッフロールが表示される。相変わらずこの辺のセンスはピカイチだ。

そんな慌ただしいロス市警にあって、一人だけデスクに座り携帯電話片手にピコピコとやっている男がいる。ポッターだ。ポッターは少し大きめの体を安っぽい椅子に預け、器用に携帯電話のボタンを押していく。そこにハリーがやってきた。

「よう、また携帯か!?」

ポンっとポッターの肩に手をかける。ポッターは携帯の画面を隠すようにして顔を上げた。

「いや!まじで今いいところなんだって!」

「なんだ、また出会い系か?」

「まじで!もうちょっとでこのココルルって女落とせるんだって!」

あまりに夢中のポッターにハリーもウンザリ顔だ。

「出会い系もいいが、女子中高生には注意しろよ!お前を逮捕しなきゃいけなくなる。あと、さっきから課長がカンカンになりながらお前を睨んでるぞ」

「ヒィ!」

課長は透明な板で仕切られたブースの中で葉巻を咥え、ジロリとポッターを睨みつけていた。

場面は変わり、警察署内の休憩所。ハリーがマックスコーヒーを二つ購入し、一つをソファに座ってうなだれているポッターに手渡した。

「ひゃあ!冷たい!」

「まあ元気出せよ。減俸くらいたいしたことじゃないだろ」

「そうだけど……」

「そんなにいいのか、出会い系サイトって?」

その言葉にポッターが敏感に反応した。

「いや実はさ、俺もあまりいい思いはしたことないんだよ。とんでもなくセクシーな女と出会えるっていうんでアリゾナくんだりまで出かけて行ったらグランマみたいな女が待ってたりよ」

「そりゃ散々だな」

「あと、モバゲーっていうサイトなら中高生食いまくりっていう噂を聞きつけてさ、どこか分からないから、ほら、同級生の吉田っていたろ、土建屋の次男坊、あいつがそういうのに詳しいっていうんでモバゲー教えてくれって聞いたんだよ」

「ああ、あの吉田か」

「それで教えてもらったらモバゲーじゃなくてモバゲイでさ、ゲイのためのSNSとか書いてやがるの。男の股間のアップがトップにあってよ!あやうく掘られちまうところだったぜ。ピーターラビットもビックリさ!」

まあ、この辺がハリウッド映画特有のアメリカンジョークというやつでしょう。試写会では主に白人女性を中心に笑いが巻き起こっていました。

「まあ、あまりのめり込まないようにな。俺たちは刑事なんだから……」

ハリーは渋い顔をしてポッターを諌めることしかできなかった。

「出会い系ってのはまるで自分が自分じゃなくなるような感覚がある。自分でデザイナーだよって女に嘘をつけばその瞬間に刑事の自分は消え、デザイナーの自分が生まれる。まあ、別の自分が生まれるってところが魅力なんだ」

ポッターは少し真面目な顔になって語りだした。

「別の自分……」

眩しいばかりの夕日が休憩室に差し込んでいた。

「ご休憩中のところを申し訳ありません!」

そこに制服の警察官が、まるで背骨に針金を通したような姿勢の良さでやってきた。

「管内で殺人事件発生。至急現場に向かってくれとのことです!」

それを聞いてコーヒー缶をゴミ箱に投げ込むハリー。

「よしいくぞ!」

「おう!」

ロサンゼルスの街並みをパトカーが駆け抜けていくのだった。


「ひどい殺し方するねぇ」

死体を前にしてポッターは楽しそうに笑った。ハリーはというと、まるで死体から目をそらすかのようにモーテルの中を見回していた。

「おい、見てみろよ、ハリー」

何かを見つけたポッターは死体を見るようにハリーに促す。

「俺が死体を見れないの知ってるだろ!」

青い顔をして拒否するハリー。これさえなければ完璧な刑事なのに。

「いいから見てみろって」

ハリーは恐る恐るブルーシートに包まれた死体を覗き込んだ。

「右腕が……ない……」

「かなり乱暴に切り取られ、持ち去られたみたいだな」

「ということは、一連の事件と関連があるのか?」

「ああ、間違いないな」

ここ最近、ロサンジェルス管内では同様の殺人事件が多発していた。被害者はいずれも女性で、モーテルやホテルの一室で殺されている。被害者に共通しているのは、体の一部が持ち去られていることで、これまでに右足、左足、内臓、と持ち去られた3件の殺人事件が発生している。

「シリアルキラーってことだな」

「なんとも不気味な話だね」

そう語るハリーとポッターの傍らで、床に投げ捨てられていた携帯電話が怪しく光り、「メールを受信しました」とだけディスプレイに表示されていた。


署に戻ったハリーとポッターは、捜査会議に参加していた。

「被害者は高野麻衣子、23歳、ダウンタウンのナイトクラブに勤めるダンサー。交友関係は派手だったと思われます」

制服の警官がキリッと立ち上がり今回の事件の被害者の報告を始める。その会議の席の最前列の中央に偉そうに座っている一人の人物がいた。

「あの偉そうなのは誰だい?」

ポッターがヒソヒソ声でハリーに尋ねる。

「あれか、あれは本店の管理官だろ」

「ヒョー、本店が出てきたってことは、俺達所轄はただの駒ですか」

「まあそういうな」

ざわつく面々を一括するかのようにジョニー管理官は言葉を発した。

「次、殺害時の状況の報告を頼む」

それを受けて2名の刑事が立ち上がり、メモを見ながら報告を始めた。

「被害者は出会い系サイトを利用、そこで知り合った男性とモーテルに入ったところを殺害したと思われます。死因は鋭利な刃物で腹部を刺されたことによる失血死。右腕は死後に切断され、持ち去られたものと思われます」

刑事が座ると今度は別の刑事が立ち上がり、報告を始めた。

「利用していた出会い系サイトをあたり、ログの提出を求めたところ、被害者は「プリンス」と名乗る男性と頻繁にメッセージを交わし、事件当日も会う約束をしていたようです」

ジョニー管理官が口を挟む。

「その「プリンス」なる人物については?」

刑事は待ってましたとばかりに報告を続けた。

「分かりません。ログから発信元を調べましたが、イラン人から購入した飛ばし携帯だったようです。所有者は全く無関係の人間でした」

一通り報告を受け、管理官がマイクに向かって口を開いた。

「この「プリンス」なる人物を一連の事件の最重要人物とし、各自捜査にあたってくれ」

ガヤガヤと300人はいるであろう捜査員が散らばっていく。その中にあってポッターだけが椅子に座り、ワナワナと震えていた。立ち上がって捜査に行こうとしていたハリーが気がつく。

「どうした?ポッター?」

「いや、なんでもない」

「なんでもないことあるか、顔が真っ青だぞ」

「実は……」

ポッターは周囲を憚りながら語り始めた。

出会い系サイトで大立ち回りを繰り広げるのが趣味のポッターは、そこで出会ったブスな女たちから「プリンス」の噂話を聞いていた。なんでも「プリンス」は異常に金持ちであることをアピールして女どもを釣っているらしい。しかしながら、中にはプリンスに会いに行くと言ったまま帰ってこなくなった女もいて、そういったネット空間にありがちな都市伝説や怖い話レベルの噂話として語られているらしい。

「俺もサイトで会ったブスに言われたよ、プリンスには気をつけるようにしてるって」

出会い系サイト好きのポッターは許せなかった。自分の大好きな聖域を汚されるばかりか、プリンスの存在によって女性が出会い系サイトは怖い物と認識するのが大きな痛手だった。

「許せねえ!絶対にプリンスを捕まえてやる!」

珍しく意気込むポッターにハリーは一抹の不安を覚えるのだった。


「これはどういうことだ、ポッター」

リトルトウキョーの入り口に当たる交差点、ポッターとハリーは隠れるように郵便ポストの影に身を潜めていた。

「おとり捜査ってやつさ!」

ポッターは快活に答えた。

「おとり捜査って、お前、あれ……」

プリンス逮捕に向けて意気込んだポッターは、早速出会い系サイトに潜入した。しかし、いつもの女漁りではなく、今度は女としてサイトに侵入し、そこでプリンスをひっかけようと目論んだのだ。

かくして、プリンスはアッサリと見つかった。ポッターの書き込みを見てメッセージを送ってきた男は多数いたが、その中で瞬時に「こいつがプリンス」と見抜いたポッターはたいしたものだった。なんでも、メッセージが発するオーラ、というものがあるらしい。

メールをやり取りしていくうちに、相手の男は自分が相当の金持ちであることを臭わせ始め、ハリウッドスターとも交流があるようなことを仄めかし始めた。これでは普通の女ならイチコロであろう。

ついに相手が自分の名前が「プリンス」であると明かした瞬間、捜査方針は決まった。会う約束を取り付け、待ち合わせ場所に現れたプリンスを重要参考人として引っ張るのだ。

ただ、それには待ち合わせ場所に立たせるのはポッターではマズい。こんな小太りなオッサンが立ってるだけではプリンスどころか、普通の男なら姿を現さない。そこで、署内から募って代役の女性を囮として立たせることにしたのだった。

「それにしても、もっとマシな囮はいなかったのかよ」

「本当は交通課のアイドル、マキちゃんに頼みたかったんだけどな、ビビっちゃって。それで物怖じしない彼女に頼んだってわけ」

待ち合わせ場所である交差点には、見たことないようなブスが佇んでいる。遠い東洋の国、日本でヨコヅナとして活躍しているモンゴル人のような顔立ちで、体格もヨコヅナに負けず劣らずだ。それだけならばまだいいが、御本人も囮捜査の囮として使われるということに発奮したのか、セクシーなランジェリーみたいな衣装を身に纏っている。もうムチムチというかブチブチというか、透けて見えるブラが異常に危なっかしい。どれくらい危なっかしいかというと、ブラの紐が切れそうなほどにパンパンで、登山映画で仲間が落ちそうな時の紐の状態みたいになっている。

「あんなの署内にいたか?名前なんていったっけ?」

「ああ、交通課のハーマイオニーさんだ。いわゆるお局ってやつ。年も40くらいだと思うぜ」

「ありゃないだろ」

こんな囮で果たしてプリンスは現れるのか不安だったが、それでもハリーとポッターは張り込みを続けた。しかし、約束の時間を過ぎてもプリンスは現れない。

「現れないな」

「ああ」

「やっぱあれじゃダメか」

「かもな」

「それでも、あんな意気込んでるハーマイオニーさんにもういいですとは言いにくいだろ」

「お前行けよ」

「やだよ」

「俺もやだよ」

そんな憂鬱な会話をする二人をよそに、雑踏に立つハーマイオニーさんはノリノリ、セクシーポーズで道行く人を悩殺というか脳殺していたりする。その瞬間だった。

キュルルルルルルルルル!

けたたましいホイルスピンと同時にシルバーカラーの車が交差点に躍り出た。そして巧みなドライビングテクニックでハーマイオニーさん(41)を助手席に押し込み、颯爽と走り去っていったのだった。

あまりの出来事にしばし呆然とするハリーとポッター。しかしすぐに我に返って

「くそっ!やられた!」

車を追うべく急いで愛車シボレーに乗り込むのだった。


「捜査中のプリンスと思われる連続殺人犯に女性が一名拉致された。女性の名前はハーマイオニーさん、本署の職員だ!至急応援をまわしてくれ!」

無線を叩きつけるハリー、そのよこでポッターは呆然と街並みを眺めていた。

「なあ、ハリー、ロスの街は好きか?」

「は?こんな時に何言ってるんだ?」

ハンドルを握りながらイラつくハリー。そんなのはお構いなしに続けるポッター。少しポッターの様子がおかしい。

「ロサンゼルスの街は天使様たちの街だ。元々の語源は"El Pueblo de Nuestra Senora la Reina de los Angeles de la Porciuncula"で"ポルシンウラの天使達の女王"という意味。この街は天使様と女王様に守られているんだよ」

「何アホなこと言ってるんだ。クソッ!見失った!」

「だから俺たちが望むことはみんな天使様が叶えてくれる。この街にいる限りな。そこの角を右に曲がれ!」

犯人の車を見失ったハリーは、ポッターに指示されるままに車を走らせた。

「肝心なのは天使様の存在を信じることだ」

急に宗教がかってしまったポッターに戸惑うハリー、シボレーはロス郊外の街へと吸い込まれていった。


「なんてことだ、本当にいやがった」

ロス郊外の国道沿いのモーテル。その駐車場に例のシルバーの車が乗り捨てられていた。ハリーはここまでポッターに指示されるとおりに車を走らせただけだった。天使のお告げというポッターの言葉に半信半疑ながらついていくと、そこには本当に犯人の車があったのだ。

「な、天使様のおっしゃるとおりだろ?」

そのポッターの得意気な表情にイラついたハリーは、銃を取り出し、ポッターの口の中に突っ込んだ。

「いえっ!なんでお前が犯人の居場所を知ってるんだ!?」

「ウッーウッー!」

口の中に銃を入れられているポッターは喋ることができない。手足をバタバタとさせていると、ハリーがすっと銃を外した。

「ビックリしたなあ。言うよ、言いますよ。天使様ってのは嘘で、実は大体分かってたんだよ。出会い系サイトで出会ったような男女が使うモーテルは限られてる。値段が安くて人目に付かない場所ってね。それでまあ、犯人の車が走り去った方向から考えて、このモーテルだろうなって見当はついてたんだ」

「なら最初から言え!」

「メンゴメンゴ!」

モーテルの管理人に話を聞き、車の持ち主が入った部屋の鍵を開けてもらう。銃を構え、そっと部屋に入るハリーとポッター。部屋の中からはシャワーの音だけが響いていた。

目配せをし、ベッドルームに入り銃を構えるハリーとポッター、しかしそこに人の姿はなかった。ならばシャワールームかと、シャワー音がする方へとゆっくりと歩いて行った。

「そこまでだ!ロス市警だ!」

シャワールームの扉を蹴破り、一気に突入するハリーとポッター。そこには凄惨な光景が待っていた。

うつ伏せに床に転がるハーマイオニーさん。流れ出る血はシャワーのお湯に流され排水溝へと吸い込まれていた。それだけで犯人の姿はなかった。

「うっ!」

死体を見るのが苦手なハリーは吐き気を覚え洗面所へと駆けて行った。ポッターはマジマジとハーマイオニーさんの死体を調べている。

「見ろよ、ハリー、乳房が切り取られていやがる」


「ばかもん!」

課長の怒鳴る声が捜査一課全体に響き渡る。課長のデスクの前にはハリーとポッターの二人がションボリと立っている。

「勝手に囮捜査をしたばかりか、署員を一人失う結果になるなんて、お前らは何を考えてるんだ!」

二人に反論の余地はない。

「管理官もお怒りだ!停職なんかで済むと思うなよ!解雇だ!解雇!」

怒りが収まりきらない様子の課長に、冷酷な顔をした管理官が口をはさむ。

「まあ、仕方ありませんね」

それを受けてハリーは懐から手帳と拳銃を出し、デスクの上に置いた。

「お世話になりました」

それを受けてポッターも同じように手帳と拳銃をデスクの上に置いた。

場面が変わり、警察署から出てくるハリーをポッターが追う。

「おーいハリー!どうするんだよ!これから!」

振り返らず、真っ直ぐ歩きながら返答するハリー。

「どうするもなにも、俺はまだあの謎のプリンスを追い続ける。刑事じゃなくなってもな。お前はどうするんだ?」

「田舎に帰ってグランマのやってるマカロニ屋を手伝おうと思ってるよ。刑事首になったって言ったらグランマ悲しむだろうけど……」

「お前は相変わらずだな。まあいい、俺は俺のやり方でヤツを追う」

「じゃあ、ここでお別れだな」

「ああ、元気でな」

別々の方向に歩きだすハリーとポッター。ポッターのズボンの後ろポケットに差し込まれた携帯の画面にはプリンスからのメール着信を告げるメッセージが表示されていた。


まあ、あまり詳しく書くとネタばれになっちゃってまだ見てない人に怒られちゃいますので割愛しますけど、ここではハリーが独自に捜査をし、時には乱暴な手段を使ってプリンスの実態に迫ろうとします。それと同時進行で携帯メールを交わすポッターも描かれ、口ではああ言ってましたが、こちらも独自の方法でプリンスに迫ろうとする姿が描かれています。

そして、ついに、事件の核心へと迫ったハリー。プリンスの根城と思われる港の廃倉庫に到達します。真っ暗な廃倉庫に銃を構えながら一歩一歩進んでいきます。

突如、まるでハリーの到着を待っていたかのように倉庫内がライトアップされ、光の道のようにハリーを導きます。

「全ては、あのハーマイオニーの事件からだった」

暗闇に向けて言葉を発するハリー。ここまでの捜査で辿り着いた自分なりの結論を語り始めます。

「事件自体は何も感じなかった。殺されたハーマイオニーさんには悪いけどな。けれども、事件後、妙な違和感が残った」

錆びついた鉄が剥き出しの階段を一歩一歩、駆けあがっていきます。

「なぜ、所轄の刑事ごときの不祥事で、あんたが出てきて俺たちを処分したかってことだよ」

通路が終わり、小さな小部屋が現れます。少し叩いたら壊れてしまいそうなベニヤの板でできたドアが半開きになっており、さらなる闇へとハリーを導きます。

このシリーズいつものことですが、こうやって犯人を追いつめるシーンのハリーはかっこよく、さらに今回は刑事という職を捨ててまでプリンスを追いつめる姿に涙が出そうになりました。

「それに、あれが囮捜査だと知っていたとしか思えない手際の良さ。だから俺は薄々勘付いていたよ」

ギィィィィィィと音を立ててドアが開き、何やら部屋の中央に置かれている物体が目に留まりました。赤いマントのようなものをかけられたその物体は、人間一人くらいの大きさがありそうなものでした。

「問題は動機だ。エリートとして順風満帆な人生を歩んでいたアナタは、何か危険な冒険をしてみたくなったんじゃないか。それを出会い系サイトという舞台にぶつけた。プリンスとして暗躍し、女性を殺害する。そのスリルにアナタはのめり込んでいったんじゃないんですか」

ハリーはそのマントをバサッとめくった。

「ねえ、ジョニー管理官、いや、謎のプリンスさん!」

そこにはジョニー管理官の姿があった。隠れていたのだろうか、赤いマントを全身に被った管理官は、今まさにそのマントを取り去られ、顔だけをポッカリと出す格好になっていた。観念したのかその両の瞼は固く閉ざされ、ハリーの問い掛けに対しても一切応答しなかった。それでもハリーは続ける。

「あなたは出会い系サイトでプリンスとして生きる自分に別の自分を見出した。あなたにとって出会い系サイトとは知らない女に出会うことじゃなかった、別の自分、自分自身に出会うことだったんだ。そうなんじゃないですか?管理官?」

ハリーは目に涙を浮かべている。それでもジョニー管理官に反応はない。ただ重く両の瞼を閉じているだけだった。

「アナタにとって出会いってなんなんですか!?出会いなんてものは文字だけでやり取りすることでもインターネットを介して行うことでも、変に自分自身を偽ることでもない。もっと純粋で簡素な、心と心の通い合い、それが出会いってものじゃないんですか!?」

このシリーズのクライマックス。ハリーの持ち味、犯人を前にしての熱い演説が始まります。そして、いつもの名言が飛び出すのを待っていました。

「心の通い合いこそ本当の出会いでしょう、心が出会うことこそが本当の出会いでしょう!?そこに白人も黒人も関係ない!」

感動しました。

「あるね!」

しかし、そこに謎の声が聞こえます。いつもこのシリーズはこのハリーの決め台詞で解決し、大団円となるはずなのですが、なにやらおかしい。

「白人か黒人かってのは大いに関係ある!」

謎の声に驚くハリー。その反動でジョニー管理官の体がダラッと人形のように崩れ去ります。

ガタン!

薄暗いためよく分からなかったのですが、犯人と思われたジョニー管理官は既に遺体でした。というか、その遺体は首だけがジョニー管理官で、体の各部はつぎはぎだらけ、どうやら今までの連続殺人で持ち去られた被害者の体の一部を強引に縫い合わせたようなものでした。

「だれだ!」

ハリーの問い掛けに謎の声は続けます。

「俺は子供の頃、混血だってことで随分と虐められたよ。俺にとっては白人も黒人も関係大ありだった。お前がいつもそのセリフを口にするたび、白人でもない、黒人でもない俺は心を痛めてたさ」

「お前……」

暗闇に向かってあちこちに銃を構えるハリー、その表情はどんどん暗いものになっていきます。

「グランマは言っていた。俺は特別なんだって。けれども俺は自分がなんとも中途半端だと思ったものだよ。でも、俺は思ったさ、天使様が守るこの街でなら、自分は生まれ変わることができる。そう思って出会い系サイトを使い、そこに転がってる頭の男を使って体の各部を集めた。そうやって新しい自分を作ろうとしたのさ」

「まさか……!ポッター!」

暗闇から現れたその姿はポッターでした。なんと、ポッターが謎のプリンスだったのです。

「ハリー、やっと集まったよ。これで新しい自分になれるんだ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

地面が揺れます。

「ポルシンウラの天使達の女王よ!舞台は整った!今こそ新しい自分を我が手に!」

廃工場から光が立ち上り、やがてその光はロスの街を包みます。圧倒的な光は全てを凍りつかせ、駅前のロータリーでbBに載ってギャルをナンパしようとしていたチンピラが「なに、あの光?」「そんなことよりホテル行こうじゃん!」とナンパしながら凍りついていく様子が描写されます。

そしてハリーは薄れゆく意識の中で、天使と出会うポッターの姿を見るのでした。そう、世界が破滅へと向かっていく様子を感じながら。

おわり

次回予告
全てが凍てつく世界、そこに舞い降りた新しいポッターとは。ポッターの暴走を止めるために戦うことを決意するハリー。そして物語の舞台はいよいよ日本へ。1作目からの全ての事件が一つの線に繋がるシリーズ完結編!いよいよクライマックスは終息する!次回、ハリー&ポッターと死の秘宝を待て!

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