時計じかけのオレンジ

時計じかけのオレンジ

Date: 2007/10/28

人を見かけで判断するなって話があるじゃないですか。

いくらかの規律が守られた整然とした社会生活の中で、僕らは公然と人を見かけで判断することをしません。いくら心中でそのようなビジュアルによる選別を行っていようとも、それを前面に出すことはほとんどないはず。それが美徳とされているのです。あの人見てくれが悪いからきっと性格も悪いぜ、そんなことを公然と口にする人がいたとしたら、それは社会通念上あまり好ましくないのが現状です。

あれは僕が小学生の時でした。あれは母親がやけにハッスルしている時のことでした。学校を終えて家に帰るとなんか母親がスパークしていて、何をどう考えたらそういう思考に至るのか皆目理解できないのだけど、

「おソバ食べに行くわよ!」

と大車輪のごとき勢いを見せる母、幼かった僕は母のその熱い想いを受け止めきれずただただ狼狽することしかできなかった。

なんでも、少し遠い山の裾野に美味しいおソバ屋さんがあるという情報をキャッチした母はなんとしてでも食べたい、そう思ったそうだ。しかしながら、変にアクティブで変にアクティブじゃない母は一人で行くのは嫌らしく、僕を誘ったようだった。

「友達も連れて行っていい?」

こういったアクティブモードに入ってしまった母は、「仕事と私どっちが大切なの?」とか言い出す妙齢の女性くらいにウザったいことは分かりきってましたので、友達を誘ってなんとか友達のほうに逃げようと画策したわけです。

「車に乗れるのはあと3人だよ」

母のセリフはあと3人誘っても良いと暗に示すものでした。あまり乗り気ではないようでしたが、早速電話をかけて近所の友人を誘います。みんな暇だったようですぐに2名の友人が捕まりました。きんじょということもあって鼻垂らしながら走ってやってきたわけで、タダでソバが食える、しかもドライブにまでいけると大はしゃぎ。すぐにでも行こう行こうって感じになったのですが、そこで一人が言い出したわけなんです。

「あと一人誘えるんじゃない?」

もうこの友人もずうずうしいにも程がある。彼は後に人の家に勝手に上がりこんで勝手に冷蔵庫開けて「たいしたもん入ってねえなー」と口にする豪胆な男へと成長を遂げるわけですが、そんなことはどうでもいいとしてあと一人です。あと3人まで誘えるという母の言葉を受けて誘ったのは2人だけ、単純な算数でもう一人誘えるというわけです。

「おい、だれ誘う?」

早速、僕と友人2人であと1人を誰にするか話し合います。塾とかがなくて暇そうにしている近所の友人、それでいてあまりずうずうしくないやつがいい。この人選によってはソバ屋までドライブが楽しくないものになってしまいますから重要です。真剣に、真剣に話し合う僕たち。母はその光景を微笑ましく見守っていました。

「なあ、山本を呼ぼうぜ!」

友人の一人が言い出します。しかしながら、僕は正直、山本君のことはあまり好ましいとは思っていませんでしたので少し複雑な気分。いやいや、山本君自身の中身は大好きですよ。たまに公園でエロ本とか拾ってきますし、何より喋る内容が本当に面白い。中身だけ見たのならば本当に好きな部類なんです。

でもね、山本君、なんか顔がオッシコ漏らした時みたいな切ないことになってんですよ。常に「あー漏らしちゃったー」的な哀愁すら感じる表情をしておられるんです。まあ、そういった顔だから山本君が嫌いだとか、仲間外れにしようってことは全然なくて、僕だって途方もないブサイクフェイスですから言わないですよ、ただ、その山本君はドライブに向かないんじゃないかなって思ったんです。

考ええもみてください。少し遠めのソバ屋までルンルン気分でドライブですよ。そんな中にあってオシッコ漏らしたみたいな顔した山本君がいたらどうなりますか。もしかして山本君漏らしちゃったんじゃ、と気が気ではありません。山本君の顔を見る度にハラハラしてしまい、とてもじゃないがドライブ、そしてその先にあるソバ屋が楽しめるとは思えません。本当に漏らされたらそれこそたまったものじゃありません。

「山本君はやめておこう」 冷静に言い放つ僕。その言葉に友人たちは動揺しました。 「なんで、山本君と仲良いじゃん」

これはもう、僕が危惧している本当の理由を告げねば納得しない勢いです。山本君はいつもオシッコ漏らしたみたいな顔してるから我々もハラハラして色々と大変だと思う、そう伝えようと思ったのです。

「山本君は顔がさ・・・」

さあ、そう言った瞬間ですよ。これまでニコニコと僕らの話し合いを見ていた母が、見る見ると怒りの表情に。そこには母の優しさも穏やかさも弱々しさも欠片も存在しない勢いで修羅がおわした。

「アンタ!人を見た目で判断するような子に育てた覚えないよ!」

ズカズカと歩み寄ってきて殴る蹴る。あの優しい母が殴る蹴る。友人たちもその光景をポカーンと見ることしかできず、とんでもなくシュールな絵図。薄れ行く意識の中で見た母の顔は涙でグチャグチャでした。母の荒ぶる呼吸と、怒りから声にならない声が出ているのか、ヒョーヒョーと言いながら僕を殴る姿はバルログそのもので、そのうち金網にへばりついて飛んでくるんじゃないかってほどでした。

結局、怒り狂った母によってソバ屋行きは取りやめになり、友人たちもなんとも気まずい思いを抱えながら帰宅。その日の僕はソバ屋どころか夕飯も抜きで正座させられて説教されるという。事情を知らない人が見たら「なに?彼この後自殺するの?」って言い出しかねないほどの怒られっぷりでした。

僕が他人を見た目で判断したことが許せなかった。それだけを伝えたいようだった。ここまでヒステリックブルーな例は極端ですが、往々にしてそういうもんじゃないかと思います。やはり大っぴらに人を見た目で判断するってのはあまり良くない。僕らはそうやって育てられてきたし、今尚そういったモラルの中で過ごしているはずだ。

けれども、ちょっと待って欲しい。ちょっとだけ立ち止まって考えてみて欲しい。そもそも、人を見た目で判断するってのはそんなに悪いことなのだろうが。バルログに突付かれるくらい悪いことなのだろうか。

ここで一つの例を挙げるので考えてみて欲しい。

僕は先日、2027という名前の極悪なスロット台に歴史的に金を巻き上げられるという大失態を演じてしまい、給料日までの30日間を600円で過ごさなければならないという地獄の一丁目に到達した。もちろん、その600円すら光の速さで使ってしまい、もうここまで絶望的だと意味もなく部屋の掃除とか始めてしまうのだけど、そこで一つの考えに至った。

「この電子レンジ、売っちまったら金になるんじゃ?」

だいたい、なんでウチに電子レンジがあるのかすら分からないくらい使用しない。ずいぶん前にガスがとまってしまい、カップラーメンを作ろうと容器ごと中に入れてチンしたらアルミの部分が放電して火を吹いた。それ以来使ってない。こんなもんなくなっても大して困らないじゃないか。

もうすぐに電子レンジ担いでリサイクルショップに行きましたよ。電子レンジっていったらアンタ、むちゃくちゃハイテクな家電製品ですよ。22世紀からやってきた家電製品ですよ。なんでも温めることができる。下手したら飯だって炊けますからね。いくら買い叩かれたとしても1万円は固いと睨んで行きましたよ。

そしたら、外見の油汚れが酷いという理由で2500円ですよ。買い取り価格2500円ですよ。スーパーハイテク家電が2500円、悪い夢でも見てるかと思いました。

結局、こういった場では見た目が全てなんですよね。リサイクルショップにとっては見た目が綺麗かどうか、それだけが大切なんです。こう見えてもこいつは結構いい温め方する、だとか、優しい温め方をする気のイイヤツ、なんてのは全く関係ないんですよ。見た目汚い、2500円。これですよ。世の中ってだいたいこうなんですよね。

そりゃ僕だって人間と電子レンジを混同するつもりはありませんよ。でもね、やっぱそういうことなんですよ。よく知りもしない電子レンジを買い取る時、やはり見た目で判断するしかないわけなんです。この「よく知らない」ってのが実はポイントで唯一見た目で判断しても許されるポイントなんじゃないかなって思うんです。

前方からナイフ持った正体不明の亀田家みたいなのが歩いてきたとしましょう。アナタはその亀田家をよく知らない。するとどうすると思いますか。そう、完全に見た目で判断して、チンピラじゃねーかと警戒するはずです。それは至極当然で誰にも非難されるべきものではありません。多くの場合において見かけってのは一番最初に手に入る情報ですから、よく知りもしないものを判断するのに必要不可欠なんですよ。

問題はある程度知ってる人を見かけで判断することです。その人の内面やその他のことを知っているにも関わらず、それでいて見た目で判断する。これはあまり褒められたものではありません。

実際にはそんなに匂うわけじゃないのに外見が匂いそうだからと職場で噂する人。

実際には逮捕歴もないのに、いつか性犯罪やりそう、あれはやる顔よ、とか職場で噂する人。

職場のロビーにウンコのついたパンツが捨てられているというテロ事件があった時に、あの一ブリーフはいてそうな顔よね、犯人よ、と噂する人。

これらは決して許すことのできないモラル違反なのです。そして癒えることのない心の傷なのです。クソッ!僕はトランクス派だよ!

とにかく、こういったネガティブイメージでの見た目判断はってのは悲しいことで、決して繰り返してはいけない重大な過ちなわけですが、実はその反対もあるのです。

この間のことなんですが、まあブラブラと、仕事するでもなく完全にサボるでもなく、まるで次元の狭間にでもいるような曖昧でファジーな感じで職場の廊下をプラプラ歩いていたんですよ。もう暇すぎて仕方ない、ウンコ付きパンツをロビーに投げ込んで平和な職場を恐怖のズンドコに叩き落してやろうか、とか考えていた時ですよ。

「おーい!」

まるで飼い犬を呼び止めるかのごとく声をかけられましてね、職場では空気みたいな存在で、僕といたしましても気配を殺して歩いているものですからなかなか声をかけられる機会って少ないんですよね。

「はい、なんですか」

僕もやぶさかでない感じで呼び止められた方を振り向いてみますと、そこには先輩の姿が。まあ、僕はこの人がウンコパンツテロの犯人じゃないかって疑ってる、だってブリーフはきそうな顔してるもの、って人を外見で判断してはいけません。とにかく先輩にそんなことは言えません。そこはかとなくどうでもいい雑談に花を咲かせます。すると、先輩がとんでもないこと言い出したんです。

「今日の夜7時から、近くの中学校の体育館で練習するから」

何の説明もせずいきなりですからね。何の練習かもさっぱり分からない。頭おかしい。

「え?練習?聞いてませんけど?」

そもそも話の繋がりがさっぱり分からないんですが、色々と聞いてみると何やらおかしな方向に話が展開してるんです。

ウチの職場の近くには○○工業というモロ体育会系みたいな会社がるんですが、どうもウチとそことは結構犬猿の仲らしいんですね。ことあるごとにいがみあってるというか互いに互いを意識し合ってるというか。近くなんだから仲良くすればいいじゃんって思うんですけど、大人の世界って結構複雑みたいなんです。

で、そのギクシャクした関係が一気に表層化するのが、毎年恒例の親善バレーボール大会らしいんです。これは先輩に言わせると親善の名を借りた戦争で、お互いの名誉を賭けて本気で戦うらしいんです。で、ここ3年ばかりウチの職場は負けているという体たらく。さらにメンバーも足りてないって言うじゃないですか。

「はあ、大変ですね」

僕はすっかり他人事で聞いていたんですが、そこで先輩がとんでもないこと言い出すんです。

「お前、メンバーだから」

もうね、意味が、わから、ない。

何を食って育ったらこんな思考に至るのか皆目分からないんですけど、僕が職場対抗バレーボール大会のメンバーになってるんです。

「いや、何で僕なんですか。僕バレーボール下手ですよ」

何とか食い下がるのですが先輩は譲らない。

「お前、背が高いしバレーうまそうじゃん、頼んだよ、7時からだから」

これですよ、これ。確かに僕はなぜか身長だけは高いのですが、背が高いからバレーも上手いだろう、この短絡思考ですよ。これこそが見かけ判断と言わずに何を見かけ判断と言うのか。世の中にはですね身長が高くてもバレーがド下手な人間がいるんですよ。ハッキリ言って僕なんか身長が5メートルあっても満足にできない自信があるからね。

「無理ですってば!」

なんとか勘弁してもらえないかと食い下がる僕。

「大丈夫、大丈夫、レクリエーションのノリだから気楽にきてよ」

実は、「あの人悪そう」「あの人バカそう」「臭そう」「死んだらいい」なんていうネガティブな見た目判断ってのはそんなに困らないんですよ。そうだけど何か?的な大いなる心で受け止めていればそんな偏見の目で見られてもそう痛くはない。問題はポジティブな、良い方向での見た目判断ですよ。

背が高いからバレーボールが上手なはずだ。

これはエリッククラプトンとプランクトンくらい違いがあります。もう本当に困る。困りすぎる。そんな見た目だけで判断されて過剰に期待だけ膨らまされる。実力が伴っているならそれも良いんでしょうが、問題はその見た目に内容が追いついてない場合です。

とにかく、なぜか見た目でバレー上手いと過度の期待をされています。もうどうしようもないので「レクリエーションのノリだから」という先輩の言葉を信じて仕事終わりに体育館に行ってみます。最近運動不足気味だし、まあ軽いノリならいいかなって感じで気軽に体育館へ。

「オラァ!立て!立て!そんなんじゃまた○○工業に負けるぞ!」

そこには修羅と化した先輩の姿が。いつもの朗らかな姿からは想像できない鬼のような先輩の姿が。なんか倒れてる後輩にバシバシとボールぶつけてました。全然レクリエーションじゃない。

「なにやってんだ!早く練習に入れ!」

烈火の如く怒られましてね、朗らかな先輩を信じてやってきたら地獄の鉄火場ですよ。

まあ、そこから狂ったように練習させられましてね。しかも僕が期待してたほど上手じゃないもんですから先輩さらに怒っちゃってね、大変だった。

「おいおい、なんだあ、ずいぶん期待はずれだな!」

とか、苦行のような練習の合間に何度も嫌味を言われるんですよ。そんなん、見た目で判断して勝手に期待してたのはそっちですからね。それで期待外れとか嫌味言われてもどうしようもない。これだから見た目判断は困る。

とにかく、地獄のような練習が何回か続き、相変わらず先輩に「この期待はずれ!」と罵られる毎日、そしていよいよ○○工業との親善バレーボール大会の日がやってきました。

「みんな今日まで辛い練習に良くぞ耐えてくれた」

試合前、メンバーを集めて神妙な顔で話し出す先輩。

「俺はこんな性格だからみんなには迷惑かけたと思う。でも今日の試合に勝つことだけを考えて練習してきた。ついてきてくれてありがとう」

先輩・・・。

心なしか声が涙声になってくる先輩。他のメンバーも何かグッときてるようだった。最初こそは先輩に騙されてメンバーにさせられ、練習にいきたくないばかりに仕事を辞めることも考えた。チャンスがあれば先輩を暗殺しようかとも考えた。でも今ならハッキリ言える。今日、僕らは勝つ、先輩のために勝つんだ。

「さあ、○○工業のメンバーがきたぞ!」

ゾロゾロとやってくる○○工業メンバー、コイツらが今日の僕らの相手。コイツらを倒すために苦しい練習に耐えてきたんだ。キッと○○工業のメンバーを睨みつけます。いよいよ決戦の時、僕らの苦しみの集大成が試される時です。

「さあ、いくぞ!」

再度チームメンバーで円陣を組んで気合を入れなおします。そして、試合前練習をしている○○工業のメンバーを睨みつけます。どんなやつらが来たって俺たちは負けない!

って見るんですけど、何やら様子がおかしい。いや、様子というかなんというか、○○工業のメンバーが根本的におかしい。

いやね、他のメンバーから、やけにバレーが上手いオッサンがいるとか、高校時代に全国大会に出た経験のあるメンバーがいるとか色々と伝え聞いており、かなり強力なメンバーを想定していたのですが、そえらを遥かに凌駕する強力メンバーがいるじゃないですか。

和気藹々と練習している○○工業のメンバーなんですけど、ユニフォームこそ○○工業って名前の入ったやつ着てるんですけど、その中身が根本的におかしい。明らかにおかしい。

いやね、全員黒人なの。6人全員黒人なの。

もう黒人も黒人、超黒人。黒人がヒャッホーとか言いながら陽気にバレーボールしてやがるんですよ。パニック物の映画で一番最初に死にそうな黒人がウジャウジャいるの。タイソンゲイみたいな黒人がバシバシスパイク打ってんの。これにはYujiOdaも大喜びだよ。

「冗談じゃねえ!全員助っ人外人じゃねえか!」

メンバーに一人とかなら分かるけど全員助っ人とか頭おかしいんじゃないか、と僕らも○○工業の監督に抗議するんですけど、なんでも研修でブラジルかどっかからやってきている人々らしく、日本での親善の一環として出てもらうことにしたとか何とか。この試合は我が職場と○○工業との戦争だと言いましたけど、建前上は親善試合です。そう言われちゃあ何も言えない。

とにかく、黒人の身体能力ってのは桁外れですから、どうやっても勝てる光明が見出せず、僕らは試合前から意気消沈ムード。

「黒人チームと試合するんだけどどんな気持ち?」

「別に」

って感じでした。ほとんど諦めてた。

だってジャンプ力とかパワーとか桁違いですよ。スパイクするとバレーボールがピンポン玉みたいな勢いで飛んでいくんですよ、おまけに筋肉ムキムキですよ。卑猥なくらいにムキムキですよ。その反面、こっちのメンバーなんてスターダストレビューのメンバーみたいなもんですからね。勝てるわけがない。ていうか、スポーツにおいて黒人が相手ってだけで見た目の時点で勝てる気がしない。

けれどもね、いざ試合を始めてみると黒人たちがルールを分かってなくて大騒ぎ。サーブ2回打とうとしたり、ネットに手をかけてスパイク打ったり。しかもベンチにいたもう一人の補欠黒人がいてもたってもいられず勝手に出てきてましたからね、いつの間にか7人とかになってた。もう黒人の面白さは異常と言うしかない展開に。

結局、25-4とか圧倒的な点差で勝利を収めてしまい。僕らの至上命題だった勝利を手に入れたのでした。

僕らは多くの場合において見た目のみで判断を下します。背が高いからバレーが上手いだろう、黒人だからスポーツが上手いだろう。僕ら人間は何をどうやっても心と心で通じ合えるはずがない。自分のことは自分にしか分からないのだ。ならば人を判断するときどうするか。これはもう、電子レンジを売るときと同じで外観で判断するしかないのだ。

外見で人を判断するのは決して悪じゃない。問題はそこで思考停止してしまうことで、いつまでも外見からだけ受ける印象に左右されてしまうのが最も愚かで残念な行為なのだ。見た目が悪そうでも話してみるといいやつ、見た目がいやなやつっぽくても話してみるといいやつ、見た目が黒人で勝てる気がしない、でもやってみると練習の成果で勝てたじゃないか。そうやって外観の情報を受け止めつつ、その先に進むことが大切なのだ。

試合後の打ち上げの居酒屋。黒人チームを倒して俺たちのバレーは世界レベルだ、と検討違いも甚だしい話題で盛り上がっていると、いつの間にかあの職場ウンコパンツテロ事件に話題が及んだ。

「誰があんなテロ行為を・・・」

「小学生くらいのときは、ウンコ漏らした子が処理に困ってパンツごと捨てるとかあったけどさあ」

「社会人にもなってするやついるのかよ」

と大盛り上がり、自然と誰が犯人だろうかという話題になったのですが、そうすると満場一致に近い感じで皆が僕を見るじゃないですか。なんで僕なんだよ、なんでそんな満場一致でそうなるんだよと反論したのですが、皆が口々に言います。

「だって、やりそうだもん」

「ブリーフはいてそうだもん」

「なんかいっつもウンコ漏らしたみたいな顔してるじゃん」

と見た目で判断して好き放題ですよ。なんだよ、漏らしたみたいな顔って。

とにかく、見た目で人を判断するのはそんなに悪いことじゃない。そこで思考停止せずに先に進むことこそが大切なのだと思ったのでした。

それにしてもたまたまブリーフはいた日にあんな悲劇が起こるなんて。金がなくて水ばかり飲んでたら下痢したんだよな。しかし、ちゃんとゴミ箱に捨てたはずなのになんでロビーなんかに、と冷や汗をかきながら勝利の美酒に酔いしれるのでした。

名前
コメント