オナッセイ大賞ノミネートNo.7「無題」

オナッセイ大賞ノミネートNo.7「無題」

Date: ----/--/--

トゥルルルル、トゥルルルル、
オナニー特別捜査本部、略してオナ部には、今日も朝から電話が鳴り響く。
「はい、オナ部。オナニッ?!オナ会がまたデモを始めただと!分かった、すぐ行く」
電話を切ったオナ部長は捜査員を招集した。
「デモ隊を逮捕だ!急げ!それから青木、桜井、お前達はビデオ屋で張り込みだ!」
「イェッオナー、ボス!!」

日本では、オナニーは法律によって固く禁止されている。オナニー研究国際機関略してオナ研が、オナニーは性犯罪を助長するという研究結果を発表したからだ。性器を弄ぶオナニーは、子孫繁栄という高尚で神聖な行為を冒涜し軽視させ、性の乱れをもたらす。国は性犯罪の氾濫を恐れ、オナニーをした者には最長で3ヶ月間AV貸し出し禁止およびティッシュペーパー押収という罰則規定を設けた。

しかしオナニー犯罪は一向に減らない。今、こうしている間にも多くのオナ崇拝者が部屋で隠れオナニーをしているに違いない。

オナ部長は憂いのため息をついた。俺たちはいつまでこんな戦いを続けるのだろう。オナ会はどんどんゲリラ化し、最近では街角デモオナニーを始める始末だ。取り締まっても取り締まっても、新たなオナ会が発足する。イタチごっこじゃないか。
しかし俺はやらなければならないんだ。オナニー根絶に向けて、全精子を傾注してやらなければならないんだ。
オナ部長は頭を垂れ首を振りながらリモコンのスイッチを押した。テレビの画面では、尾奈玲子が清純な白いドレス姿で歌っている。

♪私はオナったことがない
 灯の消えた部屋のTV
 AV男優のっかってても
 急にピストンかけられてもしたくなかつた
 二人の腰が ゆれるのを
 不思議な気持ちで見てたけど
 私オナったりするのは 違うと感じてた
 遊びじゃないのよオナニーは A HAHN
 しないと言ってるじゃないの U HUUN
 見世物じゃないのよオナニーは A HAHN
 お触りだけならいいけど
 ちょつと弄りすぎるのよオナニーは

HO HO HO HO HO HO HO HO HO
HU HU HU――

玲子は今一番売れている人気アイドル歌手だ。それだけではない、彼女は清純派アイドルとして、オナニー撲滅委員会のイメージキャラクターに選ばれ、CMで「ダメ、ぜったい」とオナニーを諌めたり、街角で「あなたの手を汚さないで」と書かれた垂れ幕の下で握手会をしたりと、多忙な毎日を送っている。

今日はオナステで新曲を披露する日だった。玲子は誰もいないメイク室で鏡に映った自分の顔をじっと見つめていた。これが私?尾奈玲子、これが私なの?いいえ違う!これは本当の私じゃないわ!だって本当の私は…本当の私は…!!
「玲子さん、スタンバイお願いします」
不意にメイク室のドアが開いてスタッフが顔を出す。玲子は慌てて立ち上がって微笑み、「分かったわ」と小さく答えた。

番組収録後、玲子は帽子とサングラスで顔を隠し、夜の街をフラフラと歩いていた。駅前で青年がギター片手に歌を歌っている。澄み切った美しい歌声。玲子は吸い寄せられるようにそち らに足を向けた。と、玲子の足が止まった。青年の声が、こう歌っている。

♪オナニーオナニーLALALA~
 オナニーオナニーHEYHEY!

玲子は青年をじっと見つめた。青年は玲子の視線に気づき、微笑みながら歌い続ける

♪やっちゃいけないのさ 知っているのさ
 あの頃の俺たちとは違うのさLALALA

歌い終わってもまだ立ち尽くしている玲子に、青年は「こんばんは」と声をかけた。玲子は一瞬うろたえたが、静かに彼に歩み寄った。
「それって、オナニー撲滅歌なの?」
青年は目を伏せた。
「俺たちはもうオナニーはできない、頭じゃ分かっているけど体はなかなか…慣れないんだ」
そう言う青年の股間は、心なしか膨らんでいるように見えた。
「本当のオナニーは禁止されているから、こうして歌を歌って気を紛らわせている。歌を歌うことが、今の俺にとってはオナニーなんだ」
「オナニーですって?このきれいなメロディーが?澄んだ歌声が、オナニーですって?」
「そうさ、オナニーっていうのは、もともと美しいものだったのさ」
「美しい?オナニーが美しいですって?」
「そう…オナニーは自然の摂理なんだ。花が咲いたり、川が流れたりするのと同じさ。オナニーは大自然の一部なんだ。そこ にあってしかるべきもの、意識せずとも人間の内に存在するもの…。禁止するべきことじゃない…いや、こんなことを言っていたら逮捕されるな、ハハハ。」

自嘲的に笑う青年。玲子は目を丸くしてそんな彼を見つめていた。これまで悪いことだと、けがらわしいことだと思っていたオナニーが、美しい自然…。玲子の頭の中で何かが音を立てて崩れた。それはこれまでの自分のオナニーを隠し通してきた壁だったのかもしれない。

そうだ、玲子はオナニーが大好きなのだ。昼はオナニー撲滅キャンペーンをしながら、夜は部屋に帰るといつもベッドにもぐってひっそりとオナニー三昧!!OH!オナニー イズ マイウェイ!
玲子は考えた。オナニーと自然について、毎晩繰り返す快楽について、そして一つのゆるぎない決心。

「私、行かなくちゃ!」玲子は立ち上がった。青年は驚いて玲子を見上げたが、すぐに微笑んで「頑張れよ」と言った。

玲子は走った。目指すはテレビ局だ。今日は「人間を腐らせるオナニー」というテーマで朝まで生討論が行われているはずだ。「生」なのだ。玲子は息を切らしながらスタジオにたどり着き、息を整えた。ゆっくりとドアに手をかけ。勢いよく開けた。そして討論中のパネラーの間に飛び出した。

「な、なんだね君は!本番中だぞ…や、君は尾奈玲子じゃないか!」
生スタッフや生出演者が生動揺する中、玲子は生カメラを両手でガッシと掴むと、しっかりとそれを見据えて大声で叫んだ。

「私はオナニーが大好き!大好きよ!したことがないなんて嘘っぱち、オナニーしてるの、毎晩してるのーッ!!おかずは亀の産卵よーッ!!!」

玲子の叫びは日本中を揺るがした。あの尾奈玲子が、清純な尾奈玲子がオナニーをしている!しかも毎晩!しかも亀の産卵をおかずに!!!これ以上の衝撃があろうか。

「オナニーばんざーいッ!!」もう止まらない玲子をスタッフが慌てて取り押さえ、カメラを止めたがとき既に遅し。玲子のシャウトは電波に乗った。

「なんてことをしてくれるんだ、玲子!君のおかげで番組は…いや、局自体が危ない目に遭うぞ!君だって、こんなことをしていれば逮捕されるぞ!」
玲子の襟首を掴んで激しく揺さぶるディレクター。
そこへスタッフが駆け寄ってきた。
「ディレクター、電話やファックスが止まりません!」
「抗議がきたか、とにかく謝罪だ、謝罪して…」
「いえ、それが違うんです、これを見てください」
スタッフが送られてきた数枚のファックスを差し出した。
そこには-
「オナちゃん、最高!」
「玲子ちゃんの勇気に乾杯オナニー!」
「俺達もオナニーしてるぜ!みんな応援してるから、頑張れオナ!」
玲子を応援する言葉が書き連ねられていたのだ。
「なんだ、これは…」
玲子は静かに言った。
「これがみんなの答えなんだわ、みんな私と一緒だった。みんなオナニーが大好きなのよ。あなたたちだって、本当はそうなんでしょ?」
周りのスタッフ達は押し黙った。しかし、股間の膨らみが全てを物語っている。テレビ局の外では、玲子を応援する人々の歓声が絶え間なく響いていた。

その頃…
「やりやがったな…」
寝室でテレビを見ていたオナ部長が呟いた。尾奈玲子、なんという女だ。やられた、してやられた。そう呟きながら、オナ部長は手を動かし続けた。俺のオナニーのおかず、玲子…ッ、アッ!
フィニッシュの後、部長は捜査員達に電話をかけた。
「尾奈玲子、彼女を本部に連れて行くんだ。そうだ、逮捕だ。いや、違う。彼女を取り囲んで、今日はみんなでオ鍋だ!」

数週間後、ブラウン管に映る玲子の姿があった。
新曲「遊びじゃないのよオナニーは」を歌っている。

♪遊びじゃないのよオナニーは A HAHN
好きだと言ってるじゃないの U HUUN
見世物じゃないのよオナニーは A HAHN
淫らなだけならいいけど
ちょつと快感すぎるのよオナニーは

日本はオナニー解禁になった。オナ研が、オナニーを我慢することが人体にとって非常に不健康であるとの研究結果を発表したからだ。おかげで玲子もオナニー大好き発言で逮捕されるどころか、さらに支持を集めることになった。
「オナニーばんざーいッ」
玲子は今日もカメラに叫ぶ。元祖清純派オナアイドルとして、新たな第一歩を踏み出したのだ。

ビルの大きなスクリーンに映る玲子の姿を見上げ微笑みながら、いつかの青年が股間をまさぐっていた。


名前
コメント