オナッセイ大賞ノミネートNo.3「春のできごと」

オナッセイ大賞ノミネートNo.3「春のできごと」

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春の通り雨・・・・・

ワンルームキッチン付きの部屋・・・・・

涙にぬれたまくら・・・・・

一人の男・・・・・


男はベッドからゆっくりと起き上がった。

(いつの間に寝てしまったんだ・・・)

時計を見れば朝の8:30、もう完全に会社には遅刻だ。しかし彼は焦った様子も見せず崩れるようにいすに座った。彼はその体重の半分を背もたれにあずけて天井を見上げた。彼は放心状態だった。ふと彼の目に棚の上に飾られている一枚の写真が入ってきた。彼の目が一瞬にしてうるんだ。彼は昨日の夜のこの部屋での出来事をを思い出していた。


「秀明はいつもそうっ!!仕事仕事って!!」

一人の泣き叫ぶ女。この男、秀明の彼女だ。もう付き合って5年になり、同棲もしている。

「俺だっていろいろ忙しいんだよ。」

こちらは秀明、女に比べてまだ冷静だがやはりいらいらしている。

「どうしてよ、どしてあなたはそうなの!!」

「うるせえな、文句あんなら出て行けよ!!」

きっかけは些細なことだった。今日二人で夕食に出かけるはずだったのだが彼の帰りが遅れて行けなくなったのだ。

「・・・・・・・・・・・・」

女はしばし沈黙した。そして何も言わずに走って外へ出て行った。 彼はさすがに焦った。今までにケンカで「出て行け」と言ったことは何度もあったが、実際に出て行かれたのは初めてだったからだ。彼はしばし呆然としていた。しかしすぐに我に返り、急いで外に出て彼女を目で捜した。遠くにとぼとぼと歩く彼女の後ろ姿が見えた。彼は通行人の目も気にせずに叫んだ。

「おい待てよ!俺が悪かったよ、戻ってきてくれよ恵!!」

秀明の彼女、恵は一瞬歩みを止めたがまたすぐに歩き出して夜の闇に消えていった。

彼はしばらくそのまま突っ立っていたが、しばらくしてふらふらと自分の部屋に戻った。そしてそのままベッドに崩れ落ちた。すると彼はズボンのポケットの中の小さな立方体がごつごつするのを肌に感じた。

(そういやこれ、渡せてねえや・・・)

それは婚約指輪だった。実は今日は彼女の誕生日、この絶好の機会を利用して彼はプロポーズをしようとしていた。それゆえに彼は残業にさらに指輪を買う時間が加わってしまって帰りが遅くなってしまったのだ。しかし家に帰るなり彼女は泣いていて、そしておもいっきりまくし立てられたので彼も少しむっときてしまったのだった。だがその結果がこれだ。彼は後悔した。

(もしこのまま恵が帰ってこなかったら・・・)

とてつもない不安が彼の胸をよぎった。彼はいつしか泣いていた。 何時間たったろうか。彼は泣き続け、そして深い眠りについた・・・・・


今、彼の目からは完全に涙があふれている。昨日のことが夢であってほしい。彼はそう願った。しかし朝起きるといつもキッチンにいるはずの彼女はいない・・・。彼はしばし天井を見上げたまま呆然としていた。

何分たったろうか、彼はふと自分の股間に違和感を感じた。彼は驚きを隠せない様子でゆっくりとそこを見た。なんと彼の股間はズボンの上からでもはっきりとわかるくらい膨らんでいたのだ。

(ちくしょー、何でこんな日に朝だちするんだ・・・)

彼は自分を呪った。しかし彼の意思とは裏腹に彼の股間はどんどんと膨らんでいく。

(ちくしょー、ちくしょー)

彼は激しい自己嫌悪にかられつつも、もう半ば自暴自棄になって、ズボンのベルトをはずし、勢いよくズボンをずらして自らの男根をしごき始めた。

(恵・・・恵・・・・・)

彼の目からは涙が止まらなかった。

(恵・・・恵・・・・・)

彼の頭の中には彼女との楽しい5年間の思い出が走馬灯のように浮かんだ。初めて出会った喫茶店、一緒に行った東京ディズニーランド、おいしかった彼女の手料理、そして彼女との初めての夜・・・・・

「戻ってきてくれ、恵・・・・・」

彼は自らの男根をしごきながら、自分の気持ちを口に出していた。

(秀明・・・・・)

ふと彼は心の中に恵の声を聞いた気がした。

「恵・・・恵・・・本当に愛しているんだ。戻ってきてくれ。」

もはや彼は叫んでいた。涙はいくらでもあふれて床をぬらした。しかし快感が全くせり上がってこない・・・・・

数分後、彼はいすの背に完全に体重をあずけ、背中は反り、顔が完全に後ろを向く姿勢で、ぐったりとして目をつぶっていた。床はびしょ濡れだったがそれはすべて涙だった。彼の男根はいまだに天井を向いていた。彼は果てることができなかった。

「恵・・・・・」

彼は小さくつぶやいた。もう彼女はいない。そんな絶望が彼を支配しかけたときだった。

「秀明・・・・・」

彼女のか細い声が返ってきた。彼は驚いて目を見開いた。彼の逆さまになった視界には、目に涙を浮かべて玄関に立っている彼女の姿があった。

「もう・・・やっぱり私がいなきゃ全然だめじゃない。」

彼女は笑った。


春の陽気・・・・・

ワンルームキッチン付きの部屋・・・・・

涙にぬれた床・・・・・

一組の男女・・・・・

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