オナッセイ大賞ノミネートNo.10「無題」

オナッセイ大賞ノミネートNo.10「無題」

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木之下流オナニー裏筋千家の第39代当主の襲名はもう目前である。にもかかわらず、雅彦は決して自らの股間をさすろうとはしなかった。

「そんなコトでは木之下流の跡を継ぐことはままなりませんぞっ!お勃ち下さい!雅彦様っ!」

という、いかんともしがたい姿の門下生の叱責に対し雅彦は、

「やっぱりムリだよ!僕には父上のようにはなれません!」

と、吐き捨てるように言い、ブリーフを半分下ろしたままの状態で道場を飛び出して いった。

17歳の誕生日に、オナニーの名門、木之下流オナニー裏筋千家の当主となる運命の下に生まれた彼の名は木之下雅彦。

甲子園でも目指していそうな筋肉質の体に包まれた彼は、2歳の頃より第38代木之下流オナニー裏筋千家当主である父、木之下千手観音の股間を見、聞き、触りながらオナニーを覚え、4歳になる頃にはすでに大人顔負けの指業、足業、それに飛距離を叩き出すことに成功していた。

言うなればオナニー裏千家界の神童である。

その頃の雅彦の口癖と言えば「僕、父上の跡を継いで、世界中に木之下のオナニーを広めてみせるよ。」というものであった。当時の雅彦にはオナニーは辛いことではなかった。なぜなら、大人達がみんな自分のオナニーを誉めてくれるのだから。

小さい頃から男手一つで育てられ、母のぬくもりを知らない雅彦にとって、木之下門下の大人達全てが母であり、心の拠り所であったのだ。

しかし、そんな平和も永くは続かなかった。雅彦が10歳になったある日、雅彦はあろうことか、父親であり第38代当主の木之下千手観音の飛距離を軽々と超え、それだけでなく、秘奥義とされている「逆手返し」までやってのけてしまったのだ。

その日以来、千手観音は道場から、そして自宅からも姿を消してしまった。全国に散らばる木之下流オナニー裏筋千家の門下生にいくら探させても、依然として行方不明のままの父。

そして、雅彦のオナニーもみるみるうちにその華麗さや流麗さ、そして若頭衆顔負けの飛距離はすっかり影を潜め、それに伴って雅彦自身、オナニーという忌まわしき行為を忘れようとしていた。

しかし、幼少の頃から体に染みついている雅彦にとってオナニーはすでに呼吸のようなものとなっており、忘れようとしても、忘れることはできず、修行ではないが独り股間をさすり続けることだけは止めようとはしなかった。

そして、時は残酷に過ぎゆき、雅彦は間もなく17歳の誕生日、すなわち木之下流オナニ裏千家の跡取りとなる時を迎えてしまう。こうなると雅彦の気持ちを無視し、木之下流幹部は不在のままの当主の座に早く座って欲しいと慌ただしく動き回るようになった。

そうなると雅彦も意地になり、「せめて形だけでも」と願う木之下流幹部に対して、憎悪の気持ちすら芽生え、股間をさすることすら止めてしまった。

勃ちたくない雅彦と勃たせたい門下生。

そんな無益な争いの中、雅彦は

「やっぱりムリだよ!僕には父上のようにはなれません!」

と、吐き捨てるように言い、ブリーフを半分下ろしたままの状態で道場を飛び出して いった。

走りだした雅彦と門の前ですれ違った一人の男。その男の容姿を確認した雅彦は、あまりの驚きに声も出ずにその場に崩れ落ちてしまう。その男こそ、第37代当主、木之下千手観音その人であった。

「父上・・・なぜ、何故。」

帰ってきたら絶対殴ってやろうと思ってたのに・・・。今はただ溢れ出る涙を拭うこともせず、そして、下ろしたブリーフを上げることもせず、雅彦は無邪気な子供のように父の胸に飛び込んだ。どのくらい泣いただろうか。涙も枯れ果てたと思ってたのに・・・。

そして、父の姿をもう一度見ようと顔を上げると、父の後ろにはどこかで見たことのあるような、そして、とても懐かしく、温かい感じを思い出させてくれる女性が静かに立っていたのだ。

「・・・母・・・上?」

母を知らずに育ったのに。自分でも思ってもいない言葉を発してしまい、狼狽する雅彦を見つめ、静かに微笑む女性。そして、無意識のうちに母と呼んだ女性の清々しさに異常な性的興奮を覚え、あろうことか自らの男根に一切触れることなく発射してしまったのだ。

先祖代々誰一人成し得ることのできなかったそれは、まさしく木之下流裏筋千家の極意「無触の境地」と呼ばれる「触れずして放つ」究極の射精行為なのである。

「やはり最後の切り札は母であったか。とうとうやったな雅彦、いや、39代目。」

鬼の家元ではなく、優しい父がそこにはいた。父は若い雅彦の類い希なる才能を早くから見いだし、よもや息子ならば「無職の境地」にたどり着けるのではと考え、この日の為に泣く泣く妻との別居を提案し、そして自らも草葉の陰から息子のムスコの成長を見守る決意をしたとのことなのである。

何という深い愛情、そして、何という強い絆であったことか。

もはや木之下家を遮るものはどこにもなく、両親の愛を目の当たりにした雅彦は、溢れ出る精液を拭うことも忘れ、ただただありがとう、ありがとうと繰り返すのだった。

襲名披露の日、雅彦は木之下流オナニー裏筋千家の流儀にこう書き加えている。

「オナニーの神髄はすなはち両親への感謝の気持ちである」と。


おしまい。

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