ウチ

ウチ

Date: 2004/04/25

僕が小学生だった頃、クラスの間で「手紙回し」なる珍妙な遊びが流行った事がありました。読んで字の如く手紙を回すことが主流だったこの遊び、なんか小さい紙に他愛もないことを書いて回し合う遊びだったように思います。

書いてあることと言えば、本当にどうしようもなくて、「ねえ、先生、昨日と同じ服だよ」とか「山田のネグセすげえなあ」とか、知らなくても何不自由なく生きていけそうな情報がテンコ盛りでした。

それを小さな紙に書いてテクニカルに折りたたむ。で、先生の目を盗んでスリリングに手紙のやり取りをする。別にみんな本当に手紙に書いてある内容が知りたいわけじゃなくて、純粋にスリルだけを楽しんでいたように思います。

言うまでもなく、この手紙は連絡網より強烈な確実さでクラス中を駆け巡るわけですが、どういうわけか僕にだけは回ってきませんでした。クラスの皆に回るというのに、何故か僕にだけはビタイチ回ってきませんでした。

それもそのはずで、僕の隣の席に内田君という男の子が座っていたのですけど、その彼が意地悪をして僕にだけ手紙を回さなかったのです。皆が嬉しそうに手紙を回しているのに、内田の所で全てストップ。まるで水を塞き止めるダムの如きストップ力を見せ付けていたのです。

「あれ、すげえ面白かった。危うく笑いそうになったよ」

「笑い堪えるのに必死だった」

休憩時間、楽しそうに手紙の内容について話し合うクラスメイトたち。本当に楽しそうだった。本当に羨ましかった。できれば内田が死んで、僕にも手紙が回ってくればいい、とすら思っていた。

あれから10と数年。あの日手紙を回してもらえなかった僕にもしりとりリレーコラムなる企画のバトンを渡してもらえるようになりました。こういった企画を回してもらえますと、あの日手紙が回ってこなかった日々を思い出し、嬉しいやら気恥ずかしいやら面倒くさいやら、色々な気持ちが湧き上がってくるのですが、それでもせっかく回してもらったのですから意気込んで書いてみようかと思います。

この企画は、各サイトでバトンを渡しながらしりとりでコラムを書いていく企画のようでございまして、前のサイトが書いたコラムのお題が「ラオウ」よって「う」から続く「ウチ」というタイトルでコラムを書きたいと思います。正直、あんま何も浮かんでこないので、サックリと書いてみようかと思います。


「ウチ」

住めば都、なんて言葉がある。これはまあ、どんな劣悪な場所でも住んでれば慣れてくる、そここそが都で離れ難いものになるんだよ、という意味なのだが、これが結構曲者だ。

僕はこの4月に広島を離れて新天地に移り住んだ。広島で住んでいた劣悪な住環境も、まさしく「住めば都」、引っ越す頃には離れ難いものになっていた。でもまあ、引越しがハチャメチャすぎて感慨にふける暇なんてなかったのだけど。

引っ越す先も決めずに引っ越し作業をしちゃったものだから、「どんな部屋でもいい、すぐ入居できる場所にしてくれ」なんていう豪放なやりとりで部屋を決めた。そして、盗賊としか思えないオヤジの働きかけにより家財道具を全て失った。

ロクに物件も見ずに部屋を決めたものだから、とにかく今の住環境も劣悪そのもの。今日は住み始めてもうすぐで1ヶ月になろうかという僕のウチを紹介してみようかと思う。

まず、我がアパートの立地条件。

職場まで車で片道一時間かかるという微妙な場所にある。毎朝6時に起きて5個ぐらいの自治体を駆け抜けて職場まで通勤している。仕事が終って帰る時も同じく5個の自治体を駆け抜ける。

で、アパートの位置する場所は微妙に大通り沿いで、コンビにもパチンコ屋もエロ本屋もスーパーも徒歩圏内にあり。微妙に便利だが、どうも近所のコンビニが暴走族の溜まり場になっているらしく、週末の夜はブルンバルンとシャコタンブギなサウンドを聞くことができる。

おまけに空港が近くにあるため、朝8時になると旅客機が轟音を轟かせ、我がアパートを掠めるようにして着陸する。そのサウンドはどんな目覚まし時計よりも強烈に効く。

次に住人。

セクシャルな女性や、明らかに暴走族、シングルマザーや同棲カップルなど、雑多な人種がアパートに住み着いている。基本的にどの住人もおセックスが盛んで、夜にもなれば各部屋からアバンギャルドな性的サウンドが漏れ聞こえてくる。

ゴミの分別が苦手な住人が多いらしく、ゴミ捨て場はとことんカオス。分別のぶの字もなく、燃えるゴミ置き場にズガンと自転車が2台捨ててあったりする。とことんカオスでマナーのカケラもない、豪快なゴミ捨て場。

あまりにスラムちっくな外観に、スラムな人種が多く住む。その事実を鑑みると、もはや何でもありな状態。一階に住む住人はサーファーらしく、たまにダイビングスーツみたいなのをドアの前に干しているのだけど、深夜に帰宅するとそれが首吊り死体に見えるのだから不思議だ。それだけ何でもありなアパート。

最後に、僕の部屋の中。

家財道具は全て親父の手によって差し押さえられたので、基本的に何もありません。しかもフローリングの部屋ですから何も無いとそこはとなく寂しさが込み上げてきます。

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これが成人男性が1ヶ月間生活した部屋ですからね。何もなさすぎ、すっきりしすぎ。精神と時の部屋みたいな状態になってます。オヤジから死守したパソコンが淋しげに部屋の隅に鎮座してますが、パソコンを置く台もないのでデスクトップPCを地べた置き。

また、部屋の中央にキンチョールが置いてありますが、これはゴキブリが我が物顔で闊歩してくるためで、引っ越したて来た初日にヘビー級でアブラギッシュなゴキブリが登場し、パニックになった僕が購入したものです。

部屋の全体図、別角度から。

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良く意味の分からない場所に、意味の分からない大きさの窓があります。何を考えてこんな場所に窓があるのか。しかもこの窓、ぶっ壊れてるのか開きません。なんやねん。

でまあ、ゴキブリはともかく、部屋に何も無いってのは明らかに僕の責任ですが、この物件自体もとにかく凄い。前の住人がどういった住み方をしていたのか理解に苦しむ部分が多々あります。

まず、前の住人が引越し、綺麗にして明け渡されたはずの物件であるのに、最初に部屋に入った時に玄関にタウンページが3冊置いてありましたからね。どういった類の嫌がらせか皆目検討もつきませんが、とにかくタウンページが3冊。

で、次に凄いのがトイレ。

一番最初にウンコをしようとトイレに駆け込み、トイレットペーパーが無いわ、新聞紙で拭こうかな、などと一人であたふたしていたのですが、そんな僕の目の前に途方も無い便器が飛び込んできました。

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画像が分かりづらいですが、真ん中の水が貯まる部分が黒くなっていました。これ、その部分だけ塗料が剥げてるんです。塗料が剥げて下地がモロンと出てるのですが、最初見た時、ウンコがこびり付いてるかと思って腰が抜けそうになりました。

で、極め付けがコレ。キッチンの流し台の横の部分なんですが、

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ドラゴンボールのシールが3枚貼ってありました。

シールくらい部屋を引き渡す時に剥いでおけよ!とかツッコミを入れそうになるのですが、それ以前に前の住人が何を考えてこのシールを貼ったのか、しかもキッチンに貼ったのか、理解に苦しむこと山の如しです。左下のクリリンがなんとも勇ましい。勇ましすぎて泣けてくる。

そんなこんなで、劣悪な立地条件、カオスな住人達、ありえない部屋の状態、などと活路を見出すことの方が難しい住環境ですが、今最も危惧してるのは、こんなウチでも住んでればそのうち都になるのかな、って部分なのです。出来ることならこんなウチ、都にしたくねーなー、などと思うそんな今日この頃なのです。

そうそう、思い出したのですけど、冒頭に出てきた内田君。彼は学校の目の前、校門の前に家があるという小学生にとっては素敵な住環境だったのですけど、学校帰りに僕が内田君の家を見ながら

「内田君のウチだ、がははははは」

とか言ってたら、ランドセルをしょった内田君が強烈に遺憾の意を表明するような顔をしてました。思えば、あれから内田君が手紙を回してくれなくなったのです。うん、僕が原因だった。


ということで、「ウチ」をテーマにコラムを書きました。コラムでも何でもないような気がしますが、次ぎ書く方は「チ」から始まる言葉で書いてください。

破竹ネットさんどうぞー。

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