サンライズ

サンライズ

Date: 2003/11/19

たまらないほどラリアットしたくなるヤツっているよな。

なんか、顔を見てるだけでラリアットしたくなるというか、喉元にラリアットを叩き込まずにはいられない顔というか、そういうのって確かに存在すると思うんです。

いやいや、別に「アイツのこと気に入らないからラリアットとかしてやりたいぜ」なんていうバイオレンスな思想ではないですよ。僕だってそこまで暴力的な考えは持ってませんから。

ただね、やっぱ人間って顔だと思うんですよ。「人間は顔じゃない、心だ」なんて綺麗事を言う輩もいますが、間違いなく人間は顔。僕らが主に顔で個人を識別している限り、どんなに真っ当なこと言おうが所詮人間は顔なんです。顔から受ける印象によって個人を判断している、それは当たり前のことなんです。だから僕は異性に好感を持たれないし、この歳になっても童貞なんです。クソッ!

で、人とすれ違った時、色々と判断すると思うのですよ。たまらないセクシー美女とすれ違ったら「おセックスしたい」、非常に好みの女性とすれ違ったら「コイツをオカズにオナニーしたい」、すごく誠実そうな男性とすれ違ったら「コイツと友達になりたい」、すごく面白そうな顔したヤツとすれ違ったら「コイツと夜明けまで語り明かしてみたい」。すれ違う人の顔を見て色々な「したい」が飛び出してくる、これって割と普通の事だと思うんです。

それと同じで、「コイツにラリアットを叩き込みたい」って思うような顔だって確かに存在するんです。そいつが憎いとか腹立たしいとかじゃなくて、ただ純粋にラリアットを叩き込みたい。そう感じる顔だってあるんですよ。

で、ウチの職場の同僚というか違う部署の後輩がいるんですけど、そいつがモロにラリアットしたい顔なんですよ。もう、なんというか、ラリアットせずにはいられない顔というかなんというか。

違う部署ですから、そうそうヤツと顔をあわせることはないんですけど、一日に一回ぐらい廊下ですれ違うんですよね。プラプラと廊下を歩いていたらラリアット顔のヤツとすれ違うんです。

でまあ、ソイツはやや面識ある後輩ですから、すれ違いざまに

「こんにちは、patoさん」

とか、神妙に挨拶してくるんですよね。

僕はその挨拶を受けつつ、心の中では、「うおー、ラリアットしてー」とか激しく葛藤してるんです。別に彼が何か悪いことしたわけではないのに、ヤツにラリアット叩きこまずにはいられない、ヤツの喉仏にこの腕を押し付けずにはいられない、抑えられない気持ちがブレイブしてるんです。

でもね、やっぱそういうのって良くないじゃないですか。そりゃ確かに、すれ違いざまにラリアットを叩き込み、一回転して床に倒れこむ彼を見ながら勝ち誇りたいですよ。小指と人差し指を立てて「ウィーーー!」とテキサスロングホーンを響かせたいですよ。でも、それってば社会人としてやってはいけないことだと思うんです。

どこの世界に、すれ違いざまに後輩にラリアットを叩き込む社会人がいるって言うんですか。しかもその理由が「ラリアットしたくなるような顔だったから」。もう社会人失格ですよ。

だから僕はグッと堪えた。ラリアットしたい衝動を必死で抑え込んだ。ヤツと廊下ですれ違って挨拶されるたびに、頭の中に「ラリアット」の5文字がフォントサイズ100くらいで浮かんで、「お、おう、元気してるか?ラリアット」とか言いそうになるのだけど、それでも必死で堪えた。

でもな、人間って我慢すると必ずどこかで無理が生じるんだよな。あまりに精神的圧迫が過ぎたのか、夢にまでヤツにラリアット叩きこむ絵図が出てきたものな。何か知らんけど夢の中でヤツの首が千切れるまで狂ったようにラリアット叩きこんでた。

こりゃもうラリアットするしかないな。そう思ったね。このまま我慢してたら自分の精神が崩壊してしまう。社会人としての常識だとか、そういうのかなぐり捨ててでもヤツにラリアット叩き込む必要がある、そう思ったね。

でまあ、先日のことなんですけど、ついにその後輩にラリアットを叩き込んだのですよ。憎き(憎くありません)ラリアット顔の後輩に、すれ違いざまに廊下でバスンと。

「あ、こんちは」

とか挨拶してくる後輩に、ものの見事にパトラリアット。一回転こそはしなかたけど廊下に倒れこみ、なんか目を白黒させて驚いてたよ、ヤツは。

僕も僕で大願が叶ったもんだから大喜び。口をパクパクさせて床に倒れてる後輩に向かって

「ぶはははははは、油断したな」

と勝ち誇り。廊下の中央に仁王立ちして鬼無双。いや、どんな職場やねん。

でまあ、後輩も後輩で、いきなりラリアットなんか食らっちゃったもんだから驚いちゃって

「な、なんでこんなことするんですか!」

とか、マニュアル通りの質問を投げかけてくるんです。

「いや、別に理由はないんだけど、なんかラリアット叩きこみたくなるような顔してたからさ」

と、僕も素直に自分の想いを告げておきました。何も足さない、何も引かない、本当に素直な僕の想いを。

自分の欲求の赴くままに行動する。これでは獣と同じですが、やってみるとそこはかとなく快感。我慢してあんなに苦しむくらいならもっと早めにやっときゃよかった、そう思うくらいに快感でした。

ハトが散弾銃喰らったみたいな顔して床に這いつくばっている後輩。そして勝ち誇る僕のテキサスロングホーンが廊下にこだましていました。

それからでした。

なんかな、廊下の至る場所でラリアット叩き込まれるんだわ。廊下を歩いてりゃあちらこちらから後輩が出てきてラリアット叩きこまれるの。なんかね、かのラリアット顔の後輩グループが結託して僕を狙ってるみたいなんですよ。8人ぐらいのグループで僕にラリアットを叩き込むべく狙ってんの。もう先輩後輩の上下関係もクソもないよな。

最初こそは襲い掛かってくる後輩どもを、「たわけが!十年早いわ!」などと、ちぎっては投げちぎっては投げしてたんですけど、そのうち疲れてきちゃってね。いちいち相手にしてらられなくなったんですわ。

廊下を歩いてりゃどこに刺客が潜んでるか分からないし、ヤツラはコンビプレイを覚えたらしく、後ろから僕を羽交い絞めにしてラリアット叩きこんでくるわ、美人でセクシャルなOLを囮に使ってラリアットしてくるわ、職場の廊下がルール無用のコロシアム、殺るか殺られるか、みたいな状態になっちゃったんですよ。どんな職場やねん。

このままではマズイ!そう思いましたね。こうやって後輩グループが僕にラリアットを叩き込んでるうちに、patoにラリアットを叩き込むのが職場のトレンドだとか、patoにラリアットを叩き込むべきムーブメントとか、そういうのが巻き起こったら困るじゃないですか。

職場中の人間が僕を狙う刺客と化し、女性でありながらベンチプレス200キロとか上げそうなマッスル事務員B子なんかにラリアットされたらたまりませんよ。あの かいな力でラリアットされた日にゃ、一撃で首から上がなくなるわ。

でまあ、何とかしようと刺客側の中心人物であるラリアット顔の後輩を捕まえて、

「ホント、俺が悪かった。もう堪忍して」

と素直に謝り、後輩軍団に発令されていたラリアット命令は解除されました。これで廊下を歩くたびに付け狙われることはなくなったのですが、ラリアット顔の後輩が言った衝撃の一言。

「仕返ししようとpatoさんを狙ってたんですけど、そのうちpatoさんの顔を見る度にラリアットしなきゃならない気分になったんですよね。またやっちゃったらごめんなさいね」

僕は彼のことを「ラリアット叩きこみたくなる顔」って位置づけたですけど、彼にとって僕は「ラリアットする義務を感じずにはいられない顔」になってたみたいです。

人の顔見てラリアットする義務がどうのこうのって、社会人としてというか人としてどうかと思う。

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