恐怖のポートライナー

恐怖のポートライナー

Date: 2003/11/11

人は真の恐怖に触れた時、何もできずにただ立ち尽くすだけといいます。

ホラー映画や心霊特集の再現ドラマ、そういうのを見てますと、恐怖に触れた人は「ギャー!」とか「キャー!」とか叫ぶことが多いかと思います。体から溢れ出る恐怖を声にして発し、あらん限りの声で叫んだりするものです。

しかしながら、こんなのはウソ。ありえない。ちゃんちゃらおかしい。ヘソで茶が沸く。

あのですね、エロマンガの男女の絡みに興奮し、うおー!ってな勢いで自身の性器を摩擦するんですけど、そのエロマンガのオチが「実は彼女は3年前に交通事故で死んでいた」ってヤツで、「じゃあ、僕がエッチしたのは一体・・・・?まさか、幽霊?」ってだけで怖くて眠れなくなるほどに怖がりな僕から言わせて貰いますと、悲鳴が出てるうちは真の恐怖ではない。

人間ってのはね、本当に恐怖、本当に不可解な物に接すると声すら出ないんですよ。だからね、「ギャー」とか「キャー」とか、そういうのは似非恐怖。まだまだ余裕がある証拠なんです。もうなんというか、ちゃんちゃらおかしい。

今日はちょっと、僕が体験した真の恐怖話を書きます。怖すぎて声すら出ない。身動きすら出来ない。そんな真の恐怖話を書いてみます。気のの弱い人ヤツは心臓叩いとけ。

あれは一ヶ月ぐらい前の話だったかな。

神戸市にポートアイランドっていう出島みたいな人工の島があるんだよね。海を埋め立て、そこにオフィスやホテル、住宅地、遊園地なんかを建てた埋め立ての人工の島があるの。

遥かなる海を埋め立て、そこに人間が暮らす土地を創造する。人間のエゴ丸出しの行為。しかもさらにその先を埋め立て、先の見えない神戸空港を作ろうってんだから、これが神々の怒りに触れないわけがない。だからあんな複雑怪奇な事件が起きたんだと思う。

その日、すっかり日の落ちた夕飯の時間くらいだったかな、とあるイベントに参加すべく、僕は神戸ポートアイランドに向かっていた。

新神戸駅で新幹線を降り、地下鉄で三宮駅へ。そっからポートアイランドへはポートライナーっていう島内をグルリと走っているモノレールみたいなのに乗るんだけど、そこで事件は起きたんだ。思い出しても恐ろしい、震えるばかりのあの事件が。

クソ高い乗車券を購入し、ポートライナーに乗り込んだ僕。もう帰宅する時間だからだろうか、ポートライナーの中は満員電車とは行かないまでも、座席が全部埋まるぐらい混み合っていた。

仕事帰りのサラリーマンもいる。ポートアイランドには大きな住宅地もあるから、きっとこれから家に帰るんだろうなって微笑ましく見る。仕事でかなり疲れてるんだろう、ガクリと肩を落とし、壁にもたれかかっている。

ブランド物の袋をイッパイ持った女の子グループもいる。ポートアイランドには大きなホテルがあるからね。きっと女の子同士で観光に来たんだろう。旧居留地あたりで買い物して、これからホテルに帰るのかな。

もちろんカップルだっている。神戸の美しい夜景を眺めながら愛を育むカップル。きっとこれからホテルに帰って変な棒出したり入れたり出したり入れたり。すっごいことするんだろうな。

思い思いの気持ちを乗せ、滑るようにポートライナーは動き出す。

僕も座席に座り、週間SPAを読みながら到着を待つ。

静かに静かに僕らを運ぶポートライナー。右手にはメリケンパーク付近の綺麗な夜景が広がり、いよいよポートアイランド内へと突入する。

「いいな、東京とかの電車と違って温かみがある。なんというか、ホノボノした雰囲気がポートライナーにはある」

東京の山手線なんかに乗ってるといつ刺されるか分からない、刺すか刺されるかの殺伐としたものを感じるのだけど、ポートライナーからは何も感じない。むしろホノボノとしすぎていて拍子抜けするぐらいだ。

「なんて穏やかな場所なんだろう」

ポートアイランドの風景を見ようと車窓を眺めたが、すっかり日が落ち、おまけに島内に明かりがほとんど無いためか、ただただ僕の間抜けな顔をガラス面が反射させているだけだった。

「いやー、それにしても、本当に落ち着く車内だなー」

ふと、車内を見渡す。

バサッ!

車内を見渡してしまった僕は途方もない事実に気がついてしまったのだった。知らなければ良かった、気がつかなければ良かった。そんな恐怖の事実に気がついてしまったのだ。

そう、それは読んでいたSPAを床に落としてしまうほどの恐怖だったのだ。

前述したように、車内にはサラリーマン、女の子グループ、カップル、おまけに家族連れ、さまざまな人がいる。僕の対面にはすげえオタクっぽいお兄様が睨みを効かしているくらいだ。

そんな一見バラバラに見える多種多様の乗客にあって、1つだけ共通したある事項があった。僕以外の乗客全てに全て共通する事項。

いやな、僕以外、全員メガネ

この車両、40人くらいは乗ってるだろうか。その乗客全てが、いや、僕を除いた全てがメガネ着用。黒縁だったり縁なしだったり丸メガネだったりトミーズフェラチオみたいなメガネだったりするものの、とにかくメガネ。メガネ、メガネ、メガネ。対面のオタクお兄様もフケがイッパイついたメガネをつけておられたもの。

これにはとにかく驚愕した。

普通に考えて、偶然乗った車両、その乗客全てがメガネなんてのはありえない。天文学的確率に違いない。確率の計算が出来るなら誰だって分かることだ。

それなのに、今この場、この車両は全員メガネ。しかも僕以外全員。家族連れの子供すらハリーポッターみたいなメガネかけてやがる徹底ぶり。どうなってんだ、この車両は。

とにかくですね、それに気付いちゃった瞬間。もう声も出ないくらい恐怖でしたね。足はガクガク震え、声に出そうにも声が出ない。とにかく恐怖、恐怖、恐怖。メガネ、メガネ、メガネ。

やっぱさこういうのって異常な空間やん。こういう普段ありえなさそうなシチュエーションって、必ずや後に続く恐怖体験があるもんじゃない。

いきなり電車が停車し、車内は真っ暗。月明かりを浴びた乗客どもがメガネゾンビと化して僕に襲い掛かるかもしれない。

「メガネー、メガネー」

メガネ→目がねー→目が無い。とんでもないこじ付けでゾンビ化した乗客たちはいつの間にか目が無くなっている。そいでもって、僕の目を奪おうと襲い掛かってくるかもしれない。うわー、ゾンビ化したオタクお兄様とか強そうだなー。

といったことを想像して恐怖に震えておりました。

とにかく、この車両からは逃げたほうが良さそうだ。よし、待ち合わせには遅れるかもしれないけど、次の駅で停まったら一旦降りよう。この恐怖のメガネ車両にずっと乗っていることを考えると、降りたほうがいくらかマシだ。

スッとポートライナーが駅に吸い込まれ、恐怖の車両のドアが開きました。

「よし、いまだ。逃げるぞ!」

そう思って出口のほうに向かおうとしたのですけど、停まった駅で新たな乗客が3,4人乗り込んで来たのな。もちろんそのニューカマーも普通にメガネ。新たに乗ってくる乗客までメガネ。メガネ、メガネ、メガネ。

あまりの恐怖に降りる事すら忘れた僕は、ただただ座席で震えるだけでした。「もう堪忍してください、堪忍してください、メガネメガネガネメガネメメガネメガネ(←メガネを鎮める呪文のつもり)」とか心の中で連呼しながら、ただただ震えておりました。

このように、人間は真の恐怖に触れた時、声すら出せない状態になります。大声を上げられればどんな楽だったか。取り乱して逃げられればどんなに楽だったか。

僕が体験した神戸ポートライナー、メガネ列車事件。皆さんも今度電車に乗ったら周りの乗客を見渡してみてください。もしかしたら全員メガネかもしれませんよ。身の毛のよだつ真の恐怖、声も出ないほどの恐怖、それは案外、日常のなんでもないところに口をポッカリと開けて待っているのです。

ちなみに、その時の対処方法ですが、僕はカバンからコッソリとメガネを出して自分も装着しました。するとなんか、この乗客全員が俺の仲間、そう思えて急に心強く思えたのです。

こうして、僕も含めた乗客全員がメガネをかけたポートライナーが完成。それはそれでやっぱ怖いなー、そう思うのでした。

でも、それ以上に怖かったのは、対面のオタクお兄様がメガネだったのも勿論なのですが、お兄様がシャツの下に着てたTシャツまでメガネっ娘の美少女Tシャツで、シャツまでメガネで怖いやら、別の意味で怖いやら、とにかく現世のものとは思えない異次元でした。うん、アレが一番怖かった。

名前
コメント