クールに恋して

クールに恋して

Date: 2003/08/03

そりゃ僕かていっぱしの男ですよ。どんなにクールを気取って、ラジカセに録音した音声のみでしか喋らなかったり、「COOL!COOL!COOL!」って叫んだりしても、それでも愛とか恋とか色恋沙汰に弱いのですよ。

なんというか、週末はステディと愛の短歌を詠みあげたり、毎夜の愛の電話を欠かさなかったりと、それはそれは耳まで真っ赤になるほど愛に生きる男なんですよ。

特に彼女は東京住まい、僕は広島住まいですから、やっぱウィークディとか気さくに会えるわけではないではないですか。だから、普段は受話器に向かって愛を囁くラブテレホンが欠かせないわけなんですよ。日ごと愛のベルを鳴らしてる、そういうわけね。

ステディとラブテレホンをし、今日はどんなことがあったのか明日はどんなことをするのか。そういうのを話し合っているんですわ。

彼女「今日ね、原宿行っちゃった」

僕「おいおい、原宿は欲望渦巻く犯罪都市だぜ、気をつけないと」

なんていう、見るのも微笑ましい、聞くのも微笑ましい、なんとも素敵な愛の会話が織り成されているわけなんっすよ。

僕「で、原宿でなにしてたの?」

彼女「んー、ブラブラとウィンドウショッピング」

ここで僕は思ったわけなんですよ。やっぱ甘く切ない愛の囁きを交わすのもいいけど、「今夜は君の心にポートスキャン」とか決め台詞を言うのもいいけど、やっぱ「笑い」って大切ではないですか。愛を囁きつつ、それでも彼女を笑わせる。それってNumeri管理人patoさんとしても大切ではないですか。だからバシッとギャグを言ってやったわけなんっすよ。センスがピリリと効いたイタリアンジョークをモリッと言ってやったんですわ。

僕「へー、どんな窓買ったの?サッシがちゃんとしたやつ買ったか?」

「商品をブラブラと見てまわる」ウィンドウショッピング。それと実際に窓を買ってしまう、「ウィンドウをショッピング」をハイパボリックなセンスで掛け合わせた決死のギャグですよ。もうこれで、彼女は爆笑の渦に違いない。そういう病気の人のように笑い転げるに違いない。ハッキリ言って自信があったね。

それを受けて、受話器の向こうの彼女は

彼女「はぁ?窓なんか買わないよ?何言ってんの」

とか、釈由美子もビックリの素で言ってるじゃないですか。お前は芸人殺しの天然アイドルか。

さすがの僕も引くに引けなくなって

僕「いや、ほら、色々とあるじゃん。すりガラスがいいとか、強化ガラスがいいとか。そういうのを原宿で買ったのかと思って」

とか往生際悪くも更にボケを引っ張ってしまったのですよ。通じなかったネタをさらに引っ張ってしまう、芸人としては最も恥ずべき行為です。

それでもさらに、高い芸人殺しスキルを備えた彼女。その怒涛の攻撃はとまりません。

彼女「なんで原宿行って窓買わなきゃいけないのよ。意味わかんない」

ネタが通じず、必死になっている僕にトドメとも言える一撃。貴様の血は何色だと本気で訊ねたい。

僕「いや、ほら、今のはさ、ウィンドウショッピングと窓を買うっていうのをかけたギャグでさ。なんなく原宿で窓を小脇に抱えて歩いてるの想像したら面白いじゃん」

もう致命傷というか致死量というか。ウケないどころか通じなかったネタを、必死で説明している僕。その情けなさっていったらなかったね。電話機を握り締めてちょっと泣きそうになってたもん。

彼女「は?なに?窓が?どうしたの?ねえ?そんなの買わないよ」

まだ通じてませんでした。屈辱!屈辱!また屈辱!

僕「いや、もういいです。今のは忘れてください」

笑わせるどころか、通じもしなかった僕のネタ。それでころか、考えに考え抜いたネタの面白い部分を説明させられるという屈辱。かつてないほどの衝撃。ただただ夜空を見上げて泣きました。

数多くの遠距離恋愛が存在し、数多くのカップルが今夜も電話で愛を囁いています。きっとそのうちの何組かは、僕のように意思の疎通やギャグの疎通が図れず泣き濡れているに違いありません。

日本中の、いや世界中の遠距離恋愛カップルの恋が幸多き事を祈って。そして、僕のギャグが受話器の向こうの彼女に通じることを祈って、今夜も僕は電話口での一発ギャグに命をかけます。受話器の向こうからキチガイのような笑い声が聞こえてくる日を願って・・・。

クールなままじゃいられないぜ。

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