恐怖物語 Numeri怪談

恐怖物語 Numeri怪談

Date: 2003/08/01

これから夏の日にふさわしい恐怖物語を皆さんにお届けします。とてもじゃないがシャレにならないくらい怖い話ですので、気の弱い人は心臓叩いておいてください。寝苦しい夜のお供に、気になるあの子をレイプする目的の肝試しのお供に、是非是非ご活用ください。それではどうぞ。

それは蒸し暑い日の出来事じゃった。

山村に住む青年が街へと下り、本屋へと向かったんじゃ。

青年は近所でも評判の好青年で、勤勉実直品行方正、末は博士か大臣かともっぱらの評判じゃった。そんな青年が本屋に向かった、誰もが参考書でも買うのか、小難しい専門書でも買うのかと予想するのは当然のことじゃった。

けれどもなあ、青年には誰にも言えない俗な趣味があったんじゃ。誰にも口外してはならぬ秘密の趣味、それが青年の心を鷲掴みにしてたんじゃ。なんとも酷な話よのぅ。

アイドル嗜好と言ったらいいんじゃろうか、テレビに出ている小綺麗な娘っ子を何よりも好んでいたんじゃ。それは親兄弟にも、もちろん同僚や友人にも言ってはならぬ秘密の趣味じゃった。隠れキリシタンの如くアイドルを好む、その行為がなんとも青年を興奮させたんじゃ。

本屋に行った目的は、専門書でも参考書でもなかった。禁断の趣味のために野を駆け山を駆け、やっとの思いで本屋に辿り着いたんじゃ。

大塚ちひろ初写真集「なるときんとき」を購入する。ただその一事のためだけに青年は本屋に向かったんじゃ。

殺伐としたこの世に舞い降りた一人の天使。経済不況にあえぐ日本国が生み出した17歳の天使。その天使の姿を克明に映し出した写真集が発売される。青年はもはや冷静ではいられなかったんじゃ。

用意周到な青年は、観賞用、保存用、オナニー用に三冊の写真集を予約した。定価2800円の写真集を3冊。何のためらいもなく予約していたんじゃ。

「すいません、大塚ちひろ写真集を予約していたpatoですけど」

何のためらいもなく青年は言ってのけたんじゃ。それを受けて妖怪のような顔をしたメガネのクサレ店員が、奥の棚から三冊の写真集を持ってくる。持ってくる瞬間から、写真集が金色の艶やかな光を放っているのがありありと分かった。

2800円を3冊。確かに高い金額だけど、1万円札で充分にお釣りが来る金額だ。確か、財布の中には10万くらいの現金が入っていたはずだ。と安心しきって財布を開けたその瞬間だった。

ムアーっとこの世のものとは思えない、冥府の住人としか思えない霊気が財布からたちこめてきたんだ。まるで志半ばに倒れた若武者の無念の叫びのような、恋人に殺された女性のすすり泣く声のような、異常な「何か」が財布から吐き出されていたんじゃ。

そう、財布の中が空っぽだった。

「やだよぅ、怖いよぅ」。普段はクールな青年も、みっともなくレジの前で取り乱してしまったんじゃ。空っぽの財布を前にして、みっともないほどガクガクブルブル。崩れ落ちそうなほどにヒザがガクガクと震えていたんじゃ。

10万ほどの金が財布に入っていたはずなのに、いつのまにか煙のように消えていたんじゃ。心なしか、財布の札入れの部分がグッショリと濡れていた。

「一体、10万円の金は何処に・・・」

青年は首を傾げるしかなかった。けれどもすぐに、全てを理解するに至った。

そういえば、8月9日のNumeri東京オフ。会場として使用するビッグサイトの利用料を前払いで払った後だったのだ。こういったイベントスペースは利用料は前払いが常識である、それすらも知らなかった青年は泣く泣く銀行振り込みで払ったんじゃ。

「あの、申し訳ないですが、お金が足りません」

素直にカミングアウトする青年。ここからが更なる恐怖の始まりじゃった。

「本日購入できないとなりますと、他にお待ちしていただいているお客様に回すことになりますが。なにぶん人気商品ですので・・・。」

悪魔の化身と化したメガネ店員が、まるで青年をあざ笑うかのように言ってのける。「つまらん!お前の話はつまらん!」と棺桶に片足を突っ込んでいる老人の真似をして突っぱねようとも考えたが、さすがに青年も思い留まった。

「わかりました、キャンセルでいいです・・・」

不可解な出来事に圧倒された青年は、トボトボとレジから去るのみだった。キャンセル待ちをしていたのか、たまたまその場にいたからなのか、いかにもアイドルオタといった風貌のデブオタが、青年が買うはずだった大塚ちひろ写真集「なるときんとき」を小躍りしそうな勢いで購入している姿を見て、青年は少しだけ泣きそうになったんじゃ。

なんとも恐ろしい話よのぅ。

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