風俗ゲーム VSヘルスズキ 後編

風俗ゲーム VSヘルスズキ 後編

Date: 2003/07/31

前回までのあらすじ
2003年7月、Xデーは突如訪れた。平穏な朝を突き破るかのようにオフィスに現われたB子は、人体実験に失敗した生物のように失敗パーマを見せつけてくれた。その様はバイオハザードと言う他ない。

カリフラワーの化け物B子の勢い留まらず、燃え盛る炎のようにオフィス内を闊歩するB子。それだけなら見なかったことにすればいいのだが、ヤツは途方もないことを言い出した。

「鈴木君を尾行して欲しい」

秘密のオフィスラブ、同僚達に内緒で毎夜愛の短歌を詠みあげていたB子とヘルス大好き鈴木君、ヘルスズキであったが、悲しき愛のすれ違いが起こったのだ。

彼はもしかしたら未だに風俗店に通っているかもしれない。未だに私以外の別の女にチンコをチュパチャプスされているかもしれない。彼のことは信じている。でも、疑い出したらキリがない。全てが怪しく懐疑的で、何も信じられない。愛するが故に人は人を傷つける。愛故に人は狂い、また狂うが故に愛が存在する。

どうかその目でヘルスズキが風俗店に入る瞬間を見届けて欲しい。どうか、ぐうの音も出ない証拠を掴んできて欲しい。ゴリラのようなB子は、その瞬間だけ瞳を濡らし、まるで乙女のように儚く呟いた。宝石のような涙を頬に伝わせて。

「まかせておけ」

鈴木君のプライバシーや人権を考えると、ここは尾行すべきではない。それは僕にも分かっていた。しかし、あまりに純粋なB子の「ヘルスズキへの愛」に触れてしまった僕は、なんとか二人に幸せになって欲しい、このまま結婚しておぞましい子供を設けて欲しい、といった想いから、尾行を引き受けたのだった。全ては二人のため。

ターゲットが風俗店に入るまでを尾行しまくる「風俗ゲーム」。今回は同僚がターゲットという悲しきステージであるが、プロフェッショナルに徹する僕は、それでも尾行を開始するのだった。愛情と友情、憎しみと疑惑、全てがパッションライトのように交錯する中、悲しき風俗ゲームが今始まる。

良く分からないと思うので、詳しくは前日の日記をお読みください。


軽い足取り、今にもスキップしそうな足取りでヘルスズキは歩いている。時間は午後7時。もう夏が近いためか、この時間になっても空は薄っすらと明るい。

「こう明るいと尾行も大変だな」

いつもなら見知らぬ人間を相手に尾行をするのだが、今回は勝手が違う。職場の同僚、モロに顔見知りなのだ。下手な尾行をしようものなら、一発でバレてしまう。慎重に慎重に尾行を遂行する必要がある。

そんな想いとは裏腹に、駐車場へと向かうヘルスズキの様子はアホそのもので、全く周囲を気にせずルンルン気分でマイカーへと向かってる。まさか、恋人であるB子の依頼で、同僚の僕が尾行しているなんて夢にも思わないんだろな。

マイカーに乗り込むヘルスズキ。彼が出発の準備を整え、駐車場から飛び出したのを確認した後、負けじと僕も自分の車に乗り込む。さあ、ここからが正念場だ。決してバレぬように尾行を行わなければ。

県道を少しスピードオーバー気味に走るヘルスズキのスターレット。そこから2,3台ほど一般車両を挟んで僕の車が走る。車同士での尾行は初めてだが、これならばなんとかバレずに済むだろう。

ここでほのかな期待が僕の頭をかすめる。もしかしたら、いくらヘルスズキといえども、そこまでヘルスに行ったりしないんじゃないだろうかという考え。確かに彼は、未だに禁を破ってヘルスに行ってるのは確実なんだけど、それ即ち今夜ヘルスに行くというわけではない。

もしかしたら、今日はたまたま乗り気じゃないとか見たいテレビがあるとか、そういった理由でヘルスに行かず真っ直ぐ家に帰る可能性だってあるわけだ。そうなってくるとなんとも好都合。

時間を割いて尾行をしなくてもいいし、真実を報告してもB子とヘルスズキの関係にヒビがはいるわけでもない。そう、全てが丸く収まる可能性だってあるわけだ。

「できればこのまま真っ直ぐ家に帰って欲しい、そうするば全てが丸く収まる。頼むこのまま家に向かってくれ」

ハンドルを握りながらそう懇願する僕の想いとは裏腹に、何のためらいもなく風俗街へと一直線のヘルスズキのスターレット。光る矢の如く風俗街へ一直線。

「やっぱ行くのか、どうしようもないヤツやな」

どうしようもないとは分かっていながら、それでも尾行をしなければならない僕は、ただただヘルスズキのスターレットを追って運転するのみだった。

数十分後。予定調和の如く当たり前に風俗街へ到着したヘルスズキのスターレット。薄ら明るかった空も夜の帳が落ち、なんともいえぬ隠微な雰囲気を醸し出していた。沢山の風俗店がひしめきあう中四国地方最大の風俗街は、ネオンの光がなんとも狂おしい。

さすがヘルスズキ。そこはこの風俗街の常連らしく、バッチリと自分だけの秘密の路上駐車OKポイントを確保していた。そこに当たり前のように車を止め、ネオン街へと歩を進めるヘルスズキ。その姿はまさに風俗街のヌシ。右も左も、表も裏も熟知した風俗街の貴公子。ホント、活き活きしてたもんな。

さすがにもう、ここまで来てしまったら、ヘルスズキがヘルスに行くことは確定で、それをB子に報告すればいいだけの話なんだけど、B子からの依頼は「なんという店に行ったのかバッチリ証拠を」というもの。ならばまだまだ尾行する義務がある。

さすが夜の繁華街、通りにはタクシーが溢れ、呼び込みの怪しげなオッサンや飲み屋のねーちゃん、沢山の通行人が溢れかえっている。それを掻き分け一直線に歩いていくヌシ。僕も長いこと風俗ゲームで沢山の剛の者を尾行してきたけど、ここまで堂々と闊歩してたヤツってのは記憶にない。とにかく、僕も人ごみをクロールで必死にかきわけ、ヘルスズキからはぐれない様、バレぬ様に必死で尾行するしかなった。

それにしても、なんと悲しき尾行だろうか。いくらなんでも、同じ釜の飯を食った同僚を尾行するなんて悲しすぎる。以前に、神戸は三宮で上司を尾行し、信じていた威厳ある上司が風俗店に入るのを目撃してしまった思い出、あの悲しき思い出が鮮烈に蘇る。

なんで、僕らは疑い合ってしまうんだろう。

恋人であるヘルスズキのことを信じられないB子。そして、B子の愛情に応え、ヘルス通いを止められないヘルスズキ。どうして人は傷つけあい、その傷を舐めあい、また傷つけ合ってしまうんだろう。どうして疑い合い、探り合ってしまうのだろう。

ヘルスズキを尾行する僕の頬には、一筋の涙が流れていた。

そんな僕のセンチメンタルな思いなんか何処吹く風で、一直線にヘルスへと入店するヘルスズキ。まるで自宅の門をくぐるかのようなナチュラルさでヘルスへと入店するヘルスズキ。もう、客とかそういうレベルではなく、この店の関係者なんじゃねえの?と言わんばかりの入店っぷりだった。

「やっぱりか・・・」

あまりに予想通りの結末とはいえ、なんとも釈然としないものがある。彼はやはりヘルスに行っていたのだ。B子の愛情やら信頼やら、そういうのを一切無視し、それでも彼はヘルスに魅せられていたのだ。

悪いけど、僕は余り器用な方ではない。なんとか二人の仲が丸く収まるよう、B子に提出する報告書には「ヘルスには行かず、家に直帰でした」と書くことも出来るのだが、あいにくそこまで器用ではない。嘘を書こうものなら必ずボロが出てしまうだろう。

依頼してくれたB子の信頼に報いるため、僕には真実を記載する義務がある。ヘルスズキに裏切られてしまった今、彼女の信頼に応えられるのは僕しかいないのだ。僕すらも彼女を裏切ってしまうわけにはいかない。

「PM7:55 ヘルスズキ「PRIDE(ヘルスの店名)」に入店。40分11000円のコースと予想される。」

とメモ用紙に記載しておいた。

さて、予想通りヘルスズキはヘルスに行った。入店する瞬間の後姿も携帯のカメラで撮影した。あとはプレイを終えたヘルスズキを家まで尾行すればこの仕事も終わりだ。なんとも後味の悪い結果だけども、僕には事実を伝える義務がある。なんとも心苦しいけれども、僕には事実を伝える義務がある。

ヘルスズキがヘルス店内でプレイ中、僕はジッと店の前で目立たぬように待っていた。ヘルスズキが店内で若いギャルにチンコをチュッパチャプス。そうしている間にも、僕は孤独に店の前で仁王立ち。なんともやるせないものがある。

「PM8:50 ヘルスズキ「PRIDE(ヘルスの店名)」から退店。満足げな表情」

およそ一時間近く経過した後、ヘルス店の重厚なドアが開き、中からご満悦な表情のヘルスズキが出てきた。なんとも満足なプレイだったのだろう。次の日には報告を受けたB子にとっちめられるとも知らないで、なんとも幸せそうな表情だ。

さあ、後はヘルスズキが家に帰るまで尾行だ。

様々な思いを振り切り、再度ヘルスズキの尾行を開始する。来た道をまたもやヌシのように闊歩するヘルスズキの10メートルほど後ろを目立たぬように追跡する。

前を行くヘルスズキが、不意に角を曲がる。このまま駐車しているポイントまで戻り、家に帰るだけかと思われたヘルスズキが、不意に角を曲がる。何事かと驚いた僕も、急いでその角を曲がる。そして僕は、そこでとんでもない光景を目の当たりにすることになる。

「うわっ!鈴木さん!そりゃないっすよ!」

なんと、鈴木はまたも別のヘルス店へと入店して行ったのだった。ヘルスのはしご。ヘルスの二輪車。さっきチュッパチャプスしてもらったのに、その五分後にはもう別の店へ。

「PM9:02 ヘルスズキ「エロティカナントカ(ヘルスの店名)」へ。どうやらハシゴする気のようだ」

一店舗ヘルスに行っていたという事実だけで、B子によって地獄を見せられるのは確定なのに、それが2店舗連続となるとどうだろうか。もしかしたらヘルスズキ、B子に殺されちゃうんじゃないだろうか。

またも、ヘルスズキがプレイ中、ヘルスズキの命日を予想しながら店の前で佇むのだった。

「PM9:37 ヘルスズキ「エロティカナントカ(ヘルスの店名)」から退店。イマイチといった表情」

ここらはもう、「ヘルスズキ恐るべし」と言うほかない。僕の予想の遥か上をいく孤軍奮闘の神懸り的な益荒男ぶり。

「うわ!鈴木さん、そりゃないっすよ!」

「PM9:40 ヘルスズキ「ナースナントカ(イメクラの店名)」へ入店。割引券持参の様子。3店目」

「やりすぎですってば!」

「PM10:55 ヘルスズキ「EVE(イメクラの店名)」へ入店。セーラー服でbのイメージプレイをご所望の様子(情報館の店員の証言)。4店目」

「もう堪忍してください、鈴木様!」

「PM11:22 ヘルスズキ「裸の王様(ヘルスの店名)」へ入店。もはや正視できない。5店目」

「誰かおらぬか!誰か麻酔銃を持てい!もはやヤツの動きを止めるにはそれしかあらぬ!」

「PM11:30 ヘルスズキ「金の玉子(ヘルスの店名)」へ入店。締めと言わんばかり。6店目」

あり得ない。

1夜にして実に7店の風俗店をハシゴ。怒涛の風俗ラッシュ。どう少なく見積もっても金額にして8万円は一晩で使い切っている計算。その姿はまさに現代の風・林・火・山。どういう家庭で育ったらこんな軍事大国みたいな傍若無人な真似ができるんだ。いくらヘルスズキと言っても、これはあまりにやりすぎ。

1店舗のヘルスに行っていたというだけでも大変な騒ぎ、2店舗で生命の危機であることは想像に容易いのに、6店舗となるとどうなっちゃうんだろうか。怒り狂ったB子に戸籍すら抹消されるんじゃないだろうか。もう他人事ながら心配すぎて見てらんない。

結局、6店舗をハシゴし、最後に吉野家で牛丼を食べて締めたヘルスズキは、深夜一時に岐路へとついた。ヘルスズキが部屋へと帰宅したのを見届けた僕は、その足でオフィスへと舞い戻り、B子に提出する様の報告書を作成。文中で青文字で示した文章をそのまま報告書とし、さらに証拠として携帯カメラで撮影した入店の瞬間の画像(6枚)を添付しておいた。

さすがに、6店ハシゴの様子を列挙すると相当なもので、怒り狂ったB子にヘルスズキが殺されることは確定としても、下手したらこっちまでとばっちりが来る可能性がある。

そこで、確かに彼は6店舗もハシゴし、前代未聞の風俗大車輪を見せてくれたけど、他にも心優しき良いところもあるんだよ、ということをアッピールするため

「帰り際、道端に捨てられた捨て猫に同情したヘルスズキは、その猫を抱き上げて優しく優しく撫でていた。おまけにコンビニでソーセージを買って与えていた。その優しさに調査員はいたく感動した。どうか彼の罪を減刑してやって欲しい。」

と捏造された事実を書き加えておき、そのままB子に提出した。

それを読んだB子は、子猫に関する記述など関係なしに怒りに打ち震え、特に「6店舗ハシゴ」というのが予想以上の惨劇だったらしく、みるみると失敗パーマのカリフラワーが逆立っていた。プルプルと怒りに打ち震えていた。下手したら肌が緑になってハルクみたいになるんじゃないかと思うほどだった。

その後の惨劇は、とても残酷すぎてココに書き記すことは出来ない。ただ、端的に判明している事実を羅列すると、

・怒りに打ち震えたB子は、僕が涙を流しながら調査した報告書を破り捨てた。

・次の日、なぜかヘルスズキは眼帯をしていた。

・土下座させられたらしい。

・「何でバレたんだろ、あはは。行った店まで全部ばれてるの」と笑うヘルスズキの瞳を直視できなかった。

・次ヘルスに行ったら死にます、と命を賭けた約束をさせられたらしい。

・証文まで書かされたらしい。

・それでも懲りずに行ってるらしい。

・けれども相変わらず二人は仲良しで、昼休憩には二人で乳幼児の頭部ぐらいありそうなオニギリを隠れてコソコソと仲良く食べている。

恋する男と、その女の美学は良く理解できないけど、こんな後味の悪い、同僚を売るような風俗ゲームは、できれば二度とやりたくないものだ。

・ちなみに、報酬の焼肉は未だに受け取っていないし、そんな話が微塵も出てこないのが気になるところだ。

風俗ゲーム VSヘルスズキ おわり

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