ダメ人間

ダメ人間

Date: 2003/07/15

オッス!オラ、ダメ人間!

初対面の人にそう挨拶してもおかしくないようなダメ人間ライフをエンジョイしてきました。

週明けの月曜日。誰もが楽しかった休日を思い返し、これから一週間仕事に精を出すぞー、とりあえず今週末の休みを目指して頑張るぞー!と仕事に学校にフレッシュな気分で挑む月曜日。

もしくは、サザエさん症候群ヨロシクで、終わってしまった日曜日を未だ心の中に引きずっていて、ものすごくブルーな気分で「休みまであと月火水木金、うわ、5日間もあるよー」などと次の休みの到来だけを心の支えにする月曜日。

心の持ち方は違うものの、誰しもが社会の歯車として活動するであろう月曜日。そんな月曜日に仕事をサボって朝からパチンコ屋に並ぶという暴挙に出てしまいました。

平日の、週初めの月曜、しかも爽やかな早朝、そんな歯磨き粉や洗剤のCMに出てもおかしくないフレッシュな朝にパチンコ屋に行くというダメ精神。しかも仕事サボって、しかも開店前から店の前に仁王立ち。夏を思わせるサンサンとした朝日を浴びて、パチンコ屋の前に鬼無双。実家の親が見たらさぞかし嘆くだろうと思います。ホント、神をも恐れぬ蛮行です。

僕がこんなにダメ人間で、まるで人生の奈落に転落したかと見紛うほどなのに、パチンコ屋前の歩道を行き交う制服姿の高校生達は爽やかで、友達と会話しながら満面の笑みで通学していく。その笑顔が殺したいほどに眩しい。

きっと、学校には片思い中の好きな先輩とかいるんだと思う。そして、前日に親友とちょっとした行き違いから喧嘩になったかもしれない。謝った方がいいのかな、謝った方がいいよね、でも、なんだか照れくさい。そんな葛藤が見え隠れしながらも、やはり大好きな先輩に会えるから今日も学校に行く。制服という名の戦闘服に身を包み、今日も私は学校に行く。ワクワク、きょうはどんな事が起こるかな。憧れの健先輩と会話できるといいな。

高校生なりに悩むこともあるかもしれない、勉強が苦しい事だってあるかもしれない。辛い恋に心を締め付けられるような思いをするかもしれない。けれども、君らの未来は輝かしい光に満ち満ちている。

将来自分はどんな仕事をしてるのかな。どんな人と出会い、どんな恋をして、どんな結婚をするのかな。結婚したら出窓がある家に住もう。そして家庭菜園をしよう。トイレにはレモンの香りの芳香剤を置くんだ。

ほら、君達の未来、ワクワクするほど楽しみじゃない。苦しいこともあるかもしれないけど、君たちの未来は圧倒的に楽しみなことの方が多いよ。

そんな希望と期待に満ち溢れた通学途中の高校生とは対照的に、朝っぱらから開店前のパチンコ屋で仁王立ちの僕。高校生とは対照的にその未来は限りなく灰色だ。一体、何を何処でどう間違ったらこんなにもダメ人間に成り下がってしまうんだろうか。

そんなことを悶々と考えながら、開店前のパチンコ屋の入り口に一人佇む僕。並ばなくても他に客なんて気やしないのに、パチンコ屋に住まわす妖怪、もしくは主(ヌシ)のように仁王立ちの僕。その姿は自分でも驚くほど圧倒的にダメ人間だ。

いよいよ開店の時間だ。

他に誰も客なんかいねーのに、開店と同時に一気にパチンコや店内に雪崩れ込む。まるでダンサブルに舞う南米の女性のようなトリッキーさで店内を駆け、お目当ての台を死守する。他に争う客が誰もいないのにだ。ウィークディの月曜朝にだ。それこそがダメ人間。

店内にけたたましく鳴り響くユーロビート系の音楽。そのリズムに合わせるかのようにして打ち始める僕。なかなか調子がいい。今日もガッツリ勝てそうだ。勝ったら何か高級な肉とか食べたい、肉汁溢るる厚手の肉を、それはそれはモッサリと食べたい。

などと貧乏人丸出しで考えていると、あっという間に二時間ほどの時間が経過する。もう朝というよりは昼といったほうが正確な頃合。そうなってくると、開店時には僕しかいなかった店内もにわかに活気付いてくる。

いつのまに、どこから湧いて出たのか知れないけど、モソモソと店内を蠢く他の客ども。早朝こそは客は僕オンリーだったものの、いつの間にかある程度の数の客がパチンコに興じていた。しかしながら、月曜の昼真っからパチンコを打とうなんて人間だから、どっからどうみても一癖も二癖もありそう。

国から貰ったなけなしの年金をゴッソリとパチンコにつぎ込んでいるであろう老夫婦。パチンコに熱中するあまり、夫に内緒で定期預金を解約してしまい、その金すらパチンコでなくなってしまってサラ金に手を出そうとを考えているっぽい主婦。

最初こそは調子良かったが、急に勝てなくなってしまい、負ければ負けるほど熱中してやってしまうあまり、前期に2単位しかとれなかった留年確定大学生風の若者。売れるまで帰ってくるんじゃねえ!と課長にどやされたが、どう考えても売れないので開き直って時間を潰している健康器具会社の外回り担当っぽいサラリーマン。

とにかく店内にはダメ人間、もしくはダメ人間予備軍が蠢いている。そして、朝も早くから店の前に仁王立ち、仕事をサボって大車輪の勢いでパチンコに興じるダメ人間がここにも一人。

僕らはみんなダメ人間なんだ。こんな月曜の昼真っ赤ら、こんな場末のパチンコ屋でパチンコ遊戯に大ハッスル。でも、それでいいじゃない。しょせん人生なんてそんなものなんだから。皆で頑張ってガッポリ出玉を獲得しようぜ。言葉に出さないまでも、妙な連帯感に包まれながらダメ人間どもはパチンコに興じる。

そしてそこに、この妙な連帯感を打ち破るニューカマーが到来。

「ウッソー!マジで出るの!?」

「うんうん、出るって、大丈夫だって、俺を信じろよ」

間の抜けた会話と共にカップルが登場。ダメ人間どもが蠢く店内に、圧倒的にカップル登場。和やかなダメ人間どもの連帯感を打ち破らんばかりにカップル大登場。

ホントな、こういうのは一刻も早く法規制して欲しい。コンビニ、パチンコ屋、レンタルビデオショップのエロビデオコーナー、こういった場所はカップルの入場を法律によって禁止すべき。入場してきたら射殺も可、といった強硬さで対処すべき。

「飲み物も買わなきゃね、あ、お弁当はなに食べるー?それとも私を食べるー?むふん」

とか言って、コンビニでイチャイチャイチャイチャ、ハメ撮りしかねない勢いで絡み合うカップル。それがどれだけ僕らの心を傷つけているか分かってるのか。

「きゃー!すっごいエローい!」

「今度、こんなカッコでやってみっか?」

エロビデオコーナーで、羞恥プレイと言わんばかりにエロビデオを舐めまわすカップルども。自分達は気軽におセックスできるんだぜ!って見せびらかしたい気持ちは分かるけど、それがどれだけ僕らエロサムライどもを傷つけるのか分かってるのか。

パチンコ屋だって一緒。

「ほら、こうやって打つんだよ」

「あ、なんかすごい、いやっ」

「お!」

「やったー!当たった!すごいすごい!」

そうやってお前らカップルが快勝したら大喜びするだろ。その勢いでアパートに帰って、情熱的におセックスとかするんだろ。わかってるよ。パチンコで勝利を収めて家に帰ってチンコを収めるんだろ。嫌というほど分かってる。でもな、それが俺たちシングルぱちんかーを、特に負けているパチンカーをどれだけ苦しめるか分かってるのか。ああ、あの勝ってるカップル、家に帰ったらおセックスするんだろーなとか考えると銀玉が見えないほど涙が溢れて来るんだよ。わかったか、ボケ。

とにかく、僕ら非モテがもっと住みやすい社会にするため、コンビニとパチンコ屋とエロビデオコーナーはカップル入場禁止にすべき。じゃないと僕らが辛すぎる。

それでですよ、そのダメ人間が蠢くパチンコ屋店内にやってきたカップル、男の方がケミストリーの左側みたいで、女の方が安西ひろこみたいなアッパッパーな姉ちゃんだったんですけど、この二人がすげえ大騒ぎするのな。

「きゃー!うきゃー!」とか「ウホホー!ウホホー!」とか、アツイ演出が出るたびに台に向かって大騒ぎしてるの。二人してサンバカーニバルみたいにして大騒ぎ。いくらパチンコ屋がうるさい場所だっていっても、いくらなんでもこれはいただけない。これには店内のダメ人間どももいたくご立腹。

しかもおまけに、そのカップルの男の方がモリモリと玉を出しちゃうんだからさあ大変。もう大興奮で

「すごいすごい!」

「ウホホー!ウホホー!」

と、盆と正月とクリスマスが一緒に来たような大騒ぎ。

「すごいじゃん!祐二!ムチャクチャカッコイイ!」

とまあ、パチンコで玉をいっぱい出すことがカッコイイ、と言い切ってしまう姉ちゃんに、

「へへーん、どんなもんだい」

と、黒人の子供のような無邪気さで言い放つ男(祐二)、という何とも訳のわからない光景が繰り広げられていました。おまけに、狂ったように出しまくる男(祐二)を、「うるせえなあ」と思いながらも「あんなに出して羨ましい」と妬ましく思うダメ人間、と店内は益々訳の分からない様相に。

おまけに、あまりに大量の出玉、5,6万円は固いと思われる出玉を獲得した彼氏(祐二)に気を良くしたのか、安西ひろこみたお姉ちゃんが言うわけですよ。

「ねえ、ゆうじぃ。エルメスのバッグ買ってぇ」

とかムチャクチャセクシャルにおねだりですよ。私はセックスだけが武器なのよ!と言わんばかりにアンニュイに甘ったるくおねだりする安西ひろこ。

「おう!買ったるわい!」

興奮状態の祐二は気さくにエルメスのバッグを購入することを了承する。そのあまりの即決ぶり、益荒男ぶりは僕らダメ人間を驚愕の世界へと叩き込んでくれた。

そんな傍若無人とも思えるカップルの振る舞いにご立腹した僕。

このクサレカップルめ!何がエルメスだ。テメエなんてエロメスじゃねえか。もっかい受精からやり直して来い、コノヤロウ。そもそもエルメスってなんなんだよ?あの白くてテカテカしたヤツか?そりゃエナメルじゃねえか。じゃあ同僚のヘルス大好き鈴木君、略してヘルスズキ君が患った性病か?そりゃヘルペス。全然違うじゃねえか。

などと、怒ってるんだかダジャレを思いついてご満悦なのか良く分からない状態で、ニタニタと笑いながらパチンコ台に向かっておりましたところ、

「ねえ、なんかあの人キモくない?台に向かって笑ってるよ。きもーい」

とアッパーパーな安西ひろこ様に聞こえるように陰口を叩かれました。

それによって妙にブロークンハートしてしまったことと、カップルの傍若無人な振る舞いによって精神に多大な悪影響を及ぼされてしまった僕は、それまで勝っていたのに大惨敗を喫するという衝撃の結末に。

仕事をサボって朝から店の前に仁王立ちしたにも関わらず。何時間も無駄にしてパチンコ台の前に座っていたというのに、幾万円も負けてしまうという体たらくぶり。おまけにカップルにバカにされるという特典付き。

ダメ人間ぶりを発揮してパチンコ屋に行ったら、負けるわバカにされるわでさらにダメ人間になっちゃったよ。一文無しになって家に帰る道すがら、妙に悲しくてサメザメと泣きました。

帰り際、パチンコ屋の前ですれ違った下校時の女子高生は、やっぱり期待と未来に満ち溢れていて妙に眩しかったです。夕暮れ時といえども神々しい光を放ってた。

僕にだってあんな輝いている高校時代があったはず、それがどこをどう間違ったのか、今では立派なダメ人間になっているという体たらくぶり。それと同じように、この純情そうで輝いている女子高生も、どっかで道を誤ってしまうのかな。アッパーパーな安西ひろこみたいなエロメスになっちゃうのかな。そう考えると、少しだけ寂しい気持ちになり、さらに泣けました。今日はそんな一日でした。

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