サランラップ

サランラップ

Date: 2003/02/05

僕は料理とか自炊とかは全然無縁な人間で、たまに料理らしいことはしてみるのだけど出来上がるのは異形の物の怪のようなものばかり。全く料理とは無縁なわけなんだけど、何故か台所にはサランラップなんかがあったりする。

コンビニ弁当を買ってきて食べる。ラーメン屋でラーメンを食べる。好物の唐揚げ定食を定食屋で食べるといったエンゲル係数高めの食生活をしている僕にとって、サランラップなぞ無用の長物。片腹痛いわなどと思うわけです。

サランラップと言えば、小鉢に入った一品料理なんかをラップして冷蔵庫に入れたりなんかして「明日のおかずのしようかしら」とか思いを馳せるツールな訳で自炊なぞせず目の前の食物を食ってばかりいる僕には何ら関係のない物なのです。

ではなぜこんな無用のサランラップが我が家にあるのか。

まさに日常に潜むミステリーです。自分で買った覚えもないし、誰かが我が家にお土産とばかりに持ってくる品物でもない。一体どうして我が家にサランラップが。使いもしないサランラップが。

ここでちょっと記憶を辿ってみると、どうやらウチの母親が起因しているようなのです。

生まれ育った家を出て、遠く広島の地で生活することになったとき。母は色々なものを買い揃えてくれました。貧しい我が家にありながら、一人暮らし用の冷蔵庫やら電子レンジやら布団やら。何故か洗濯機だけはなかったのですが、ちゃんと自炊もしなきゃ食費がかかるからね、と包丁やら鍋も買い与えてくれたのです。それと同時にサランラップも。

そう、まさにコレは時空を越えたサランラップな訳です。

約6年以上もの歳月を経ていながら一度も使われることのなかったサランラップなのです。そう考えると物凄いです。6年もあるのに一回も使われないなんて。小学1年生が6年生になるまでに1ミリも使われないサランラップなんて有り得ない。

それでも亡き母が僕の食生活を心配して買い与えてくれたサランラップです。そう考えると6年間放置していたというよりは、6年間大切に保存していたという漢字でしょうか。とにかく、なんとなく思い出が沢山詰まったサランラップです。

あの時、母さん僕に何を期待していたのだろうか。

まさか僕がこのサランラップを使って小鉢料理を保存するとでも思ってたのだろうか

などと考えながらサランラップを眺めていると、それに込められた母の愛を感じることが出来て無性に泣けました。

ごめんな母さん、サランラップを使わない子供で

などと込められた思い出の深さを愛しみながら6年ぶりにサランラップの封を切り箱を開けると

変な虫が卵を産んでました。

サランラップの繊維の隙間に産み付けられた卵は当の昔に孵化し、なにやら異形の虫の抜け殻が多数残されてました。糞みたいなのもいっぱいありました。

ヒギーーーーー!!

それを見た瞬間、この世のものとは思えない悲鳴を上げた僕は、渾身の力でその思い出のサランラップをゴミ箱に叩き付けました。半泣きになりながらサランラップを捨てた。

母の想いが詰まった6年物の思い出のサランラップも、さすがに虫が卵を産みつけていてはただのゴミに成り果てます。

食物を保存するために用いるサランラップも、さすがに自分自身を6年間保存することは出来なかったようです。以前に6年前のコーヒー瓶が虫の巣になっていたとラジオで報告しましたが、どうやら我が家は虫王国みたいです。

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