勝負を決するのは

勝負を決するのは

Date: 2002/10/17

抜きつ抜かれつのデットヒート。実力伯仲の大接戦。どんな勝負にしろ、互いに実力が拮抗し見応えある攻防を見せてくれるものは楽しいものです。一体どっちが勝つのか、ハラハラドキドキと応援にも力が入るものです。

片方が有効的な一手を放ったかと思えば、片方がさらに有効手で返す。お互いに最善の手を出し合っていくわけです。まるで勝負をしながらお互いを高めあうかのように。まさに手に汗握る大接戦。

どんな勝負においてもそうなのですが、こういった肉薄した大接戦を決するのは、巧手でも妙手でもないような気がします。実は勝負を決するのは圧倒的な一手しかあり得ないのです。

実力が伯仲しているからこそ、絶妙な一手では返されるのです。程よく絶妙の一手は僅かばかり上を行く手で返され、さらに僅かに上の手で返す。気がつけば自分の実力以上の力を出せたりもするのです。観ている側としては最高なのですが、勝負している側としてはたまったものではありません。いつまでたっても決着がつかないのですから。

ですから、勝負を決するには圧倒的な手を出すしかないのです。向こうが返す気も起こらないぐらい圧倒的な手で。これを出さねばいつまでも決着はつかないのです。

けれども、圧倒的な手を最初から出せるのなら誰も苦労はしません。そんなものが出せるなら最初から接戦にはなりはしない。だから、予想外の角度で攻めるべきなのです。全く予想だにしないベクトルでの一手。これこそが最高に圧倒的な手になるのです。返す気にもならない。

ちょっとズレているかもしれませんが、最近の良く知られた例で説明してみましょう。最近ホットな話題と言えば、島津製作所の田中さんがノーベル化学賞を受賞したという話題でしょうか。

学位も持たない一企業の研究者が、ノーベル化学賞です。これは大変素晴らしいことですし、誰もが同じ日本人として誇りに思うことでしょう。だれもが田中さんのことを祝福するでしょう。でも、いやらしい話で恐縮なのですが、田中さんと机を並べて研究をしていた方々はどう思うでしょうか。

ぶっちゃけ、「同じ職場の同じ研究員がノーベル賞なんて誇らしい」なんて気持ちはないはずです。そこにある感情は間違いなく嫉妬でしょう。人間の中で最も醜い感情、嫉妬。僕が田中さんと同じ職場で研究をしているのなら物凄く嫉妬すると思います。

同じ会社で、同じフロアで似たような研究をする研究員。互いに実績を上げ、論文を書き上げ、特許を取る。このようにして切磋琢磨していたかもしれません。まさに良い好敵手として互いに意識し合って競争していたかもしれません。

こういった民間の研究所での実績とは、いかに売れる商品を作るかと言う所にあります。島津製作所といえば測定機器の会社ですので、いかに売れる機器を作れるか。そのためには高性能で安価に実現できる方法を開発しなければならないのです。

ここからは仮定の話。ある2人の研究者が、いかに売れる機器を作るかで競い合っていたとします。そこに、片方の人間がノーベル賞受賞。機械が売れたとかそういうのは全然関係ないところで受賞したとしましょう。なんかもう、受賞できなかった人の負けではないですか。大負けもいいところです。

ここまで、いかに売れる機械を開発するかで競い合っていた2人。互いにスマッシュヒットを連発し、片方が売れる機械を作れば片方も作る。良い意味での小競り合いが展開されていたのです。このままではいつまでたっても決着はつかないでしょう。そこに全く角度の違う方向からノーベル賞と言う巨大なファクターが襲ってくるのです。そしてそれが勝負を決してしまう。

やはり、接戦を決するのは予想外の角度からの一手に尽きる。そう思うのです。

僕にも、こんな経験があります。

小学生の頃、僕はズボラな子供でして、クラス一ズボラなのは自分であると自負しておりました。キングオブズボラの名を欲しいままに。いや、実際には違いました。

もう一人、松井君というズボラな少年がいたのです。僕と肉薄してズボラナンバーワンを競い合う好敵手がいたのです。まさに切磋琢磨でした。

ズボラのバロメーターとしては、机の中のゴミの量が最も信頼できる指標です。机の中にいかにゴミが入っているか。いかに汚い机の中なのか、それこそが重要なのです。

僕と松井君は、ズボラなので貰ったプリントなどは机の中にしまいこんでしまいます。キチンとまとめて積み重ねるなんてことはせず、グシャグシャと机の中に押し込みます。そこに教科書やノートを出したり入れたり。どんどんとプリント類はプレスされていきます。それがみるみる蓄積され、机の奥の方は関東ローム層のようにプリントの層が積み重なっていくのです。それこそがズボラの勲章でした。

僕と松井君の机の中は、MAX時で半分ぐらいの体積がプリント層で占められていました。それこそが何より誇らしい状態だったのです。

しかし、それを担任の鬼ババアは許しませんでした。「机の中の乱れは心の乱れ」と言わんばかりに、机の中クリーンキャンペーンが行われたのです。毎月毎月、月に一度全員の机の中を担任がチェックして周るのです。それこそ、常習犯である僕と松井君の机は重点的にチェックされました。

「なにー!?この雑然とした机は何なの!!!?」

担任のヒステリックな、驚きと怒りの入り混じった怒声が教室中に響き渡ります。もちろん原因は松井君。ものすごい量のプリント層を見て担任はワナワナと震えているのです。すぐさま、ゴミ袋が取り出され、ワサワサとプリントを掻き出していきます。もう、こんな小さな机の中にどうやってそれだけのプリントが入ってたの?というぐらいのゴミが出てくるのです。その横で少し照れ笑いの松井君。なかなかやるな。

お次は僕の番です。またもや担任の怒声が響き、ゴミが掻き出されて行きます。

僕と松井君は、いつものこの担任チェック時に掻き出されるゴミの量を競っていました。ここで大量のゴミが出れば出るほどズボラなんだ。俺こそがズボラナンバーワンなんだと言わんばかりに。

それこそ、毎月が大接戦のバトルでした。僕が信じられない量のゴミを溜め込めば、松井君はそれ以上のゴミを。負けじと次の月にはそれ以上のゴミを溜めるように心がけ。毎月毎月、担任の悲鳴とゴミの量だけが増えていきました。

いつしか、毎月の担任チェックは僕と松井君だけのものになりました。他の皆はいつも綺麗にしているのでチェックする必要はない。明らかに群を抜いている二人だけをチェックする必要があると。

そんなある月。いよいよ担任チェックの日がやってきました。今月こそは圧倒的な差をつけて松井君を抜いてやる。圧倒的な量。腰が抜けるほどの量のプリントを担任と松井君に見せつけ度肝をぬいてやる。これで長かった勝負もお終いだ。今月の俺は違う。間違いなく違う。なぜならば、家からワザワザ紙とか広告とか持ってきて机の中に押し込んでおいたからだ。やはり学校で貰うプリントだけでは松井も条件は同じ。それでは大差がつかない。だから僕は家から持参した。これで圧倒的な差をつけて僕が勝つだろう。間違いなくナンバーワンだ。

いつもの如く僕の机の中をチェックする担任。いつにもまして悲鳴が絶叫に近い。当たり前だ。今までは机の半分ぐらいがプリント層だったが、今はほぼ全体がプリント層だ。手厚くプレスされたプリントがギュウギュウと詰まってる。間違いない。僕の勝ちだ。

担任は鬼のような悲鳴を上げながらプリント層を掻き出していく。もう今までにないくらいの量だ。間違いなく新記録。どうだ参ったか松井め。

そしていよいよ松井君の順番。まあ、どうあがいても彼に勝ち目はない。僕は圧倒的な差を付けたのだから。まあ、頑張ってくれや。

いぶかしい顔で松井君の机の中を覗き込む担任。またもや怒りの声を上げながらプリントを掻き出していく。しかし、やはり量は平凡だ。先月までの量とあまり変わらないプリントがでてくる。平凡なやつめ。俺は新記録だと言うのに。もう間違いないな。俺こそがナンバーワンだ。

とか思ってたら、プリントを掻き出していた担任の手が止まるのです。そして見る見る表情が変わっていきます。

「な・・・なんなのこれは・・・?」

なにやら、松井君の机の中には途方もない物が入っていたようです。てんでもなくあり得ない物体が潜んでいたのです。

いやな、ブリーフが入ってたんだわ。白いブリーフ。しかもウンコつき。茶色いウンコがベットリとついたブリーフがプリントに包まれるようにして入っていたの。

そりゃねえよ、松井。さすがにそれは反則だって。

いやね、なんか松井のヤロウ。学校でウンコ漏らしたらしいのですわ。で、途方に暮れた彼、とりあえず脱糞したことだけは誤魔化そうとパンツを脱いだ。しかし、パンツの行き場がない。ゴミ箱に捨てるのはあまりに危険すぎる。かといって放置もできない。持って帰るにも危険が多すぎる。という思想の元、一番安全な自分の机の中に隠したらしいのです。その時点で何か大切なことを見落としている気がしますが。

もうね、ウンコつきパンツの登場で、担任はおろか教室中が大パニック。阿鼻叫喚、悲鳴と怒号と泣き声と吐き気が渦巻く状態に。とんでもない、核爆弾みたいなものだ。禁じ手だよなハッキリ言って。

結局、僕はこの事件をキッカケにアッサリと負けを認め、キングオブズボラの称号を松井君に譲ることにしました。さすがにウンコつきパンツには勝てない。というか勝ちたくない。

結局、僕はゴミの量を競ってた状態でさらに量を増やすことで決着をつけたわけです。言うなれば正統派な巧手なわけ。なのに、松井はあり得ない角度からの一手を打ってきた。ウンコつきパンツと言う圧倒的な一手を。それに負けてしまったんだ。

結局、接戦を制するのは、巧手でもなんでもなくて、予想外のあり得ない一手だということ。それこそが圧倒的な差となり勝負を決する。まあつまりは、相手に張り合う気を失くさせるほどの手を打てってことですな。

ここを読んでいる方で、どんな勝負でもいいので好敵手と競っている方がいれば、正統派ではなく予想外の角度から攻めてみると良いかもしれませんよ。

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