Field of Dreams

Field of Dreams

Date: 2002/07/30

以前にもお話ししたと思うのですが、僕は野球をやってるんですよ。オッサン達ばかりが集った最弱チームで気が向いた時に試合をやってるんです。

30代40代のオッサン達が集うチームの中、僕は唯一の20代フレッシュ君としてハッスルプレイをしているわけです。まあ、20代の選手は上位打線で打つことと内野での守備が禁止されてるんですけど。

まあ、僕らのチームは、それこそ野球経験者もほとんどおらず、本気で試合に勝つことなんて狙ってないんですよ。みんな野球をするのが楽しくてしょうがない、そういったチームなんです。ホント、お気楽なチームですよ。

でもさ、やっぱ試合とかって負けると悔しいではないですか、なんというか底はかとなく悔しさが込み上げてくる気分です。ですから、試合後はいつも佐藤さんというションベンカーブしか投げられないエースピッチャーがいるんですが、その佐藤さんが

「お前らバックの守備がヘボイから負けるんだ!」

とか怒り出したと思ったら、当然守備陣も怒りだして

「場外ホームラン打たれといてよく言うな!取れるかってんだ!」

とか罵り合いですよ。そいでもって

「大体、点が取れにないのが悪い!お前ら本気で打ってるのか!?」

とか誰かが言い出して

「じゃあ、オマエも打ってるのかよ」

とツッコミがあって一触即発の雰囲気になってくるんです。もう見てらんない。試合に負けて罵りあいなんてきょう日の小学生だってやりませんよ。まあ、僕が一番罵ってるんですけどね。

練習もしない、チームワークも悪い、経験者もいない、という最悪のチームぶりを発揮しておりまして、未だに一勝もしたことないのが自慢なんです。小学生チームにも負けました。あいつらバンドばっかりしてきて卑怯なんだもん。

で、先日も試合があったのですよ。夏真っ盛りの日差しがギンギンに照りつけるような日に試合がありやがったんです。朝も早くから。ホント、まいった。

試合ということで、普通のチームとかだったら試合開始時刻よりちょっと早めに来て練習とかするんでしょうけど、ウチのチームは違います。だてに最弱を名乗ってるわけではないですよ。もうね、みんな直前にくるからね。しかも寝ぼけ眼で。遅刻してくるヤツまでいる始末。ホントにお前らは試合がやりたいのかと問い詰めたい気分ですよ。

その日も、ちょっと早めに試合会場まで車で行って、どうせ僕だけしか来てないだろうし1人でボールでも投げて体をほぐしておこうと思ったのですよ。そしたらね、チーム全員が練習してるの。狂ったように練習してるの。

「オラー!サード!」

「もういっちょー!」

とか凄い気合入れてノックとかしてるの。あのボンクラチームメイトが。もうね、我が目を疑ったね。間違えて違うグラウンドに来ちゃったかと思ったもの。でも、どうみてもあのダメなチームメイトたちなんだよなぁ。ヘボピッチャー佐藤さんなんか鬼気迫る表情で投球練習してたもの。どうなってんだ。

いやね、あんなボンクラなやつらが何故に急に心を入れ替えて練習してるのか。僕なんかいつもと同じ時間に来てるのに「遅刻だぞ、ゴラー!」とかノックしてるキャプテンの大木さん(40代代打要員)に怒られちゃったもの。なんか、みんな怖いぐらいに気合が入ってるんです。一体どうして・・・・。

その謎はすぐに解けましたよ。見るとね、グラウンドの隅のほうにチューリップハットみたいな帽子かぶったオバチャンやら、クソガキやら、年頃の娘やらがいるんですわ。いやね、たぶんチームメイトたちの家族達だと思うんです。

ははーん、わかったぞ。ってなもんですよ。いつもはボンクラな彼ら、練習もせずにまるで勝つ気のないようなプレイの連続。そんな彼らも今日だけは負けたくなかった。石にかじりついてでも勝ちたかった。大切な大切な愛すべき家族が観てるのだから。一家の大黒柱として無様な姿を見せるわけにはいかないのです。

いつもは誰も観客のいない小さなグラウンドで試合をやってるのですが、今日は観客がいます。なんだか「お父さんガンバレー」とかクソガキのアホそうな声援が飛んでます。なんかやりにくいなぁ・・・。

そしていよいよ、白熱の試合前練習も終わり、試合開始です。今日の対戦相手は僕ら同様に野球好きなオッサンどもが集って作ったチームです。楽勝のような雰囲気ですが、彼らはお揃いのユニフォームとか着てヤル気満々。きっと練習とかもやってるに違いありません。やっぱ負けそう。

僕は6番ライトでの出場でした。先発はもちろんヘボビッチャー佐藤さん。試合前からベンチ前で円陣とか組んでヤル気満々です。ヤル気満々です。ヤル気満々なんですが、試合前の鬼練習がこたえたのか、みんな死にそうに疲れた表情をしてます。もう風呂入ってビール飲んで寝てぇ、って顔してます。アホか。試合前から疲れてどうする。

もちろん、普段でも弱いのに、そんなヘロヘロではどうしようもありません。佐藤さんの投じる球なんていつも以上にヘロヘロ。ポッコンポッコン打たれるの。もうねこれはピンポン玉かい?ってぐらいホームランの嵐。

最初の方に「お父さんガンバレー!」とか言ってたクソガキも徐々にトーンダウン。試合終盤には、なんか砂をいじって遊んでました。奥様方なんか観戦そっちのけで井戸端会議でした。

もうね、みなさん一家の大黒柱としての威厳をすっかり失ってしまったかのようでした。

で、いつものように試合は16-2というワンサイドゲームで幕を閉じ、意気消沈のパパ達は定番のように罵倒しあう元気もなくトボトボトと引き上げていくはずでした。けれどもね、パパ達はすごかった、諦めなかった。

僕以外のほとんど全員のチームメイトが相手チームのベンチまで行き

「もう一試合!もう一試合!」

「おねがいします」

とか再戦を懇願してるんです。何度も何度も頼み込んでるんです。そんなね、今試合が終わったばかり、しかもワンサイドゲームで負けたのに、速攻で再戦を依頼するんですよ。

「まだ時間もあるしもう一試合」

とか懇願してるんです。

皆さんそれぞれの家庭では威厳のある父なのでしょう。それが、ハッスルするも全部空回りで、泥だらけになってボコボコに負けてるんです。さらに負けた相手に対して「もう一回やろう」とか懇願してるんです。

泥だらけになりながら必死で相手にお願いするお父さんたちは、すごくカッコ悪かった。これ以上にないぐらいにカッコ悪かった。

相手も渋々再戦を承諾し、すぐに第二試合目が始まりました。さらに疲れてるはずなのに疲れてるはずに、お父さんたちは必死で頑張ってました。佐藤さんも必死で投げてましたし、僕も必死で走りました。

疲れ果てていた奥様と子供達の目に、カッコ悪いほどに必死だったお父さんたちがどのように映ったのでしょうか。なんか急に元気になってまた声援を送っていました。

僕が打席に入った際も「お兄ちゃんガンバレー」とか声援が飛んでくるくらいでしたからね。

やっぱり下手な人間がいくら燃えて必死になっても、それはそれでカッコ悪いんだけど、なんかいいなぁって思いました。すごく陳腐な言葉しか出てこないけどいいなぁって思ったんです。

そして、試合は2-1で終わり、僕らは初めての勝利の美酒に酔いしれたのでした。商業野球ではないのですから勝つことが全てではないのですけど、やはり勝つと嬉しい。なによりチームメイトが喜んでいるのが嬉しくて楽しくて、そんな気分でした。

本当に照れくさくて本人達には言えないのですが、僕は良いチームで野球をやってるなって思いました。

初勝利オメデトウ!僕達。

まあ、勝った試合の後でも罵倒の嵐だったりするんですけどね。

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