最狂親父列伝~火炎編~

最狂親父列伝~火炎編~

Date: 2002/07/27

いやー、最近はとにかく暑いですね。なんていうか、昼間の太陽の直射日光を浴びてると皮膚が焼かれるかのような錯覚に陥ります。もう暑すぎる。大体ね、日本の夏は湿気が多すぎなんですよ、海外のようにカラッとした暑さではなく、ムシっとした暑さなんですよ。もうそれが我慢ならない。日本も海外みたいな夏にならないかなぁ。まあ、海外なんてビタイチ行った事ないんでわかんないんですがね。

それはそうと、この間実家に帰ったではないですか。玄関を開けたらイキナリ早苗のブラとか干してあってすごくボッキリしたんですが、やはり実家は落ち着いていいですね。

でね、朝方に実家に帰って、少し寝てから親父と話をしに親父の会社の事務所に出向いたんですよ。そしたらね、親父は平日の昼間だというのに仕事もせずに、必死でバッタを捕まえてました。事務所の空きスペースに草木が茂ってるのですが、そこで童心に帰ったかのようにバッタを捕まえてました。

なんでバッタなんか捕まえてるんだよ?ついに狂ったか?とか思うんですけど、どうやら彼はいたく真剣な様子。よくよく理由を聞いてみるとイグアナの餌を捕獲しているらしいのです。

何をトチ狂ったのか、親父は一年ぐらい前から事務所でイグアナを飼いはじめたんですよ。で、そのイグアナが生きたバッタが大好物らしく、喜ばせようと必死でバッタを取ってるらしいのです。あの鬼のような、修羅のような親父がイグアナのためにバッタ取りですからね。人間って変われば変わるものです。

で、親父がイグアナにバッタをあげながら言うんですよ

「ワシな、つい最近まで入院してたんだわ・・・・・」

弱々しく、まるでそのまま消え入ってしまうかのように言うのです。なんか、それを聞いた瞬間に胸が締め付けられるような苦しい気分になりました。

そういえば、なんか実家に帰るたびに親父が小さくなったように感じます。白髪も増えたように感じます。なんていうか、あれだけ威厳があり強かった父が弱っていってるような印象を心のどこかで感じていたのです。その想いが彼の入院発言で爆発しました。

親孝行したい時に親はなし、とよく言います。本当に親孝行したいときとは、親がいなくなったときであり、多くの人が後悔して悲しみを抱えたまま生きていくのです。もっと親孝行しておけばよかったと。

いつもは憎まれ口ばかり叩き合う僕と親父ですが、なんだか彼の弱々しい発言を聞くうちに、漠然と「もっと大切にしなきゃな」と思うようになりました。照れくさくってなかなか親孝行ってできないんですけどね。

「何で入院してたんだよ?どっか悪いのか?」

親父の体を気遣いながらも、照れ隠しからかぶっきらぼうに尋ねる僕。言い方こそは無機質で、事務的に聞いているかのようですが、本当はとても心配しているのです。もしかしたら性質の悪い病気かもしれません。手の施しようのなくなった親父の体。せめて最後は家で死にたいと熱望する父。その熱意に打たれた医師も首を縦に振らざるをえなかった。

こんな展開を真剣に想像していました。質問してからの沈黙が余りにも長いので「もう先が長くないと言われた」などとカミングアウトされたらどうしようかと思っていました。そして、重く閉ざされた親父の口が開かれます。もしや・・・ガン?それとも白血病?それとももっと聞いたことないような奇病なのか?そんなの聞きたくない。でも知らずにいるのも嫌だ。聞きたい。聞きたくない。様々な想いが交錯します。そして・・・・

「ヤケドで入院してた」

はぁ?不治の病じゃないの?ガンじゃないの?ヤケド?なにそれ?

いやね、なんか親父が事務所の空き地でゴミを燃やしてたらしんですわ。ダイオキシンなどの問題から小規模焼却炉の危険性が叫ばれる中、親父は平然と自家用の小さな焼却炉でゴミを燃やす地球に優しくない男です。

それでね、なんか燃やしてたゴミの火が消えて、いつのまにか火がくすぶった状態になってたらしんですわ。そうなると不完全燃焼ですので、モウモウと体に悪そうな煙が立ち込めるんです。さすがにそんな煙が出てきたら近所迷惑だなと思った親父。なんとかゴミを完全燃焼させようと考えます。

なんか手元にあった軽油をドッコンドッコン焼却炉に流し込んだらしいです。かなりデンジャラスな状態。

しかし、火は一度くすぶってしまうと、なかなか再燃するのは難しいのです。軽油如きではビクともしない。やはり何か発火点がいる。そう思った親父は溶接用のバーナーを持ち出して、焼却炉に向って炎を放射したらしいのです。軽油がイッパイ詰まった焼却炉に。その瞬間でした

ドカン!

なんか焼却炉が物凄い爆発をしたらしいです。当たり前だ。アレか、ウチの親父はアホか。ちょっと考えればわかりそうなものなのに。

で、爆発の衝撃で親父は1mぐらい吹っ飛んだそうです。なんか頭がドリフみたいにチリチリになってたらしいです。でも、それよりなにより顔に負ったヤケドが酷かったようです。

まるでリアルタイムで燃えてるかのように熱い。まさしく焼けるように熱い。顔を掻き毟られるような熱さに悶えながら事務所内に這って行く親父。ちょうどその時は事務所には誰もおらず、親父は1人で何とかしようと思ったらしいです。

見ると、デスクの上に水に戻し途中の油揚げが。ドンブリの中に満たされた水に浮かぶ二枚の油揚げ。コレで冷やすしかない!彼はそう決断したようです。もうアホ確定。

必死で油揚げを顔に押さえつけ、ヤケドを冷やす親父。50も過ぎたオッサンが顔に油揚げつけて身悶えてる姿など想像もできません。しかし、油揚げの冷却力など知れたもの。一向にヤケドの痛みは治まりません。遂に我慢しきれなくなった親父は救急車を呼び病院へと搬送されたそうです。

結局、彼は顔に軽度のヤケドを負っていたようです。で、入院するほど酷いヤケドではなかったのですが、保険をもらうために入院しなさいと医師が勧めてきたらしく、めでたく5日間の入院となったそうなのです。

入院理由が余りにもアホ過ぎて僕は笑う気にもなれませんでした。冒頭でガンか?不治の病?などと本気で心配した自分がアホのようです。とりあえず、親父のハチャメチャな行動ぶりに唖然です。彼は頭の病気かもしれない。

とりあえず、ウチの親父は狂ってる。これだけは間違いない。

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