シャレ男

シャレ男

Date: 2002/01/29

こう言うと非常にトゲがあるのは分かっているんです。気分を害する人が絶対にいることは分かってるんです。でもね、誰もが気分良くなれる文章なんて土台無理なわけで、どんな文章を書いてもそれを受けて傷つく人もいるわけで、どうしても仕方ないことなんです。だけど、今日はあえて言わせてください。僕はオシャレな男が嫌いなんです。

まあまあ、オシャレなジュノンボーイ達も落ち着いて聞いてください。あのですね、僕はオシャレな男は嫌い、貴方達はダサい男が嫌い、それで良いじゃないですか。そりゃね、僕かてオシャレな女性は好きですよ。でもねオシャレな男は頂けない。理由なんかないんです、嫌いなのに理由なんていらない。

前から言ってる様に、僕は香水の匂いがするような男はには娘はやれない、なんていう古い頭の持ち主です。もちろん、一生懸命に服とかのトレンドを調べて買い漁るような男もダメです。そんなもん軟弱もいいとこ、男は黙ってふんどしですよ。そもそも僕なんかは高校生ぐらいまで母親がジャスコで買ってきた服を着ていたような男です。母親のセンスで選んでくる服は確かにダサかったです。でもね、一生懸命に選んでくれた母親の服を無下に扱うなど僕にはできなかった。喜んで着ていたね、かあさんありがとうってね。

それに、僕は服なんて所詮チンコが隠せれば良いなどというドライな考え方ですし、正直、服装のトレンドなんてどうでもいいんです。ダサい服装でいいんです。オシャレで腹は膨れません。

勿論、親父から弟に至るまで我がファミリーはそんな状態だったんですよ。誰もオシャレのオの字も口にしない。そんなダサくて泥臭い家族だったわけですよ。正直、貧乏だったんでオシャレなんかしてられなかったってのもあるんですがね。でもね弟だけは違ってました。

確かに、彼は高校までは俺や親父と同じくダサダサファミリーの一員だったんですが、大学進学で都会に行くようになって彼は変わってしまったのです。大学を卒業し、実家に戻って生活するようになった彼はどこか洗練されていました。もうあの頃のダサい弟ではないんです。

確かに、ダサい兄としては許せなかったですよ。ええ、憤慨しましたね。自分だけ都会の絵の具に染まりやがって、それで都会派に脱皮したつもりかってね。もう殺したいくらい憎かったですよ。でもね、どんなに憎くても彼は僕のカワイイ弟なんです。殺すなんてできやしない。オシャレになった彼に腹を立てつつも僕は「彼には彼の人生があるのだから」とグッと堪えたのです。

ある日のこと、僕が帰省すると玄関先に異様な物体が転がっていました。黒い皮のブーツでした。もうね、ブーツといったらオシャレさんの代名詞ですよ。こんなブーツ履いて街を闊歩したらさぞかしオシャレでしょう。現にこの当時はナウい男性の間でブーツを履くのがトレンドのようでした。たわけが、んなもん長靴で十分じゃないか。

しかし、現に我が家の玄関には憎むべきブーツが鎮座しているのです。間違いなく弟のブーツですよ、彼以外に履くような人物は存在しません。もうね、これまでオシャレになった彼に対して必死で堪えてきましたよ、だけどね、もう限界。我慢できない。斬ってやる。

お兄ちゃん、お兄ちゃん、と鼻水を垂らしながら僕に擦り寄ってきた幼い頃の彼。
母親が戻らぬ夜に二人で卵をかけて冷たいご飯を食べた夜
一緒に海に行き溺れてしまった手のかかる弟

全てが遠い思い出で、戻らぬ日々です。彼はもうブーツを履いて町を闊歩するほどオシャレに、そして大人になってしまったんです。もうねそんな軟弱な男は斬ってやろうかと思いましたよ。でもね、僕は怒りを通り越して悲しくなってしまい、玄関先で泣いてしまったんです。ええ、ワンワン泣きましたね。

僕にすがるようにして毎日を過ごしていた幼い弟、もう知らぬ間に僕を通り越して大人になっていたのです。あいつもそろそろ俺の呪縛から抜けて生きていく時期かもしれない。なんだかそんな娘を嫁にやる父親のような気分にさえなりました。

そうだ、彼がオシャレに巣立ったことを憎んではいけない。それは自分がダサいことに対する焦りや嫉妬だったのかもしれない。それは余りにも兄として失格である。ここは一つ、彼の巣立ちを祝福してあげなければならない。

僕は夢中で玄関先のブーツを手に取り、二階にある弟の部屋に走りました。「このブーツ素敵だね、すっごくオシャレだと思うよ」笑顔でそう言って彼を喜ばしてあげたかったのです。それが僕にできる精一杯のことでした。僕は彼の部屋の前に行くとノックもせずに勢いよくドアを開け彼の部屋に飛びこみました。

ガチャ

もうね、なんと言っていいのかわからない。あのね、弟の部屋に入ったらね弟がギャルっぽい女の子と裸でベットに入ってるんです。

時間が止まりましたね。弟、彼女、俺、三人とも石像のように固まっていました。いかん・・・なにか喋らなくては、気まずすぎる。僕は当初の目的どおり、手に持った彼のブーツを誉めようと思いました。

「このブーツ素敵だね、すっごくオシャレだよ」

「あん?何言ってんの兄貴。それはコイツのブーツだよ」

なんとまあ、僕が弟のブーツだブーツだと思い嘆き悲しんでいたんですが、このブーツは弟の彼女のブーツだったみたいなんです。裸でベットの中にいる彼女のね。なんだ安心したよ、俺はてっきり弟がブーツを履くような男になったと動揺してたんだからね。彼のブーツではないのなら一安心じゃないか。

でもね、ブーツの件は解決しましたよ。問題は今のこの状態じゃないですか。弟は女といいことしようと裸でベットに入ってたんです。そこに女のブーツを持った兄が勢いよく登場。しかもブーツを誉めてるんです。明らかに異常変態兄貴じゃないですか。

「で?他にも何か用?出て行って欲しいんだけど」

明らかに弟が怒ったような口調で言っています。もうね絶体絶命とはこのことですよ。

「ん?他には用はないんだ。ただブーツのことが伝えたくてね。うん。・・・・お兄ちゃん隣の部屋にいるから、困ったことあったら呼んでね」

と満面の爽やか笑顔で言い放ち、部屋を出ました。怪しい度さらにアップ。困ったことなんだよ。呼んでねってなんだよ。まるで3Pしたがってるみたいじゃねえか。で、隣の部屋で待機してたんですけど壁が薄いんで2人の会話が聞こえるんです。

「ユニークなお兄さんだね」

「バカだよバカ。オナニーバカ」

「へぇ、お兄さん、もてないんだー、かわいそー」

「オナニーばっかしてるよ、今頃お前のブーツでオナニーしてるかもよ」

「いやーん、気持ちわるーい」

もうね、泣いたね。ワンワン泣いた。弟と彼女がセックスする隣の部屋でワンワン泣いた。悔しかったのでブーツの匂いを嗅いでみたよ。ちょっと臭かった。

とにかく、オシャレな男なんて大嫌いだ。

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