誰のために

誰のために

Date: 2002/01/11

あるところに小さなラーメン屋を営む男がいました。この店は貧相な店構えながらも、味がよく、高級な食材など一切使わずに低料金で美味いラーメンを出していました。暖かい店構、客のことを考えた低料金。貧乏な学生などに支持され、経営が苦しいながらも固定的なファンがついている。そんなラーメン屋でした。

ある日、こんな店にテレビ・雑誌で有名なラーメン評論家が来ることになりました。彼は自分の店が大きく飛躍するチャンスだと思いました。現に、評論家が美味いと認めたラーメン屋は例外なく繁盛していました。

評論家にさえ認められれば自分の苦しい経営事情も改善される。なによりも認められ多くの客に来てもらえれば自分の料理人としてのプライドを満足させることができる。

彼は評論家の好みの味、好みの食材、スープの種類を調べ上げました。高級なものを好むグルメな評論家を満足させるには高級なラーメンしかない。彼は考えうる限りの贅を尽くしたラーメンを開発したのです。そこには以前に彼の店で出していたラーメンの面影もありませんでした。

そして、いよいよ評論される日が来ました。下調べの甲斐もあり彼のラーメンは絶賛されました。評論家のお墨付きをもらった店は、瞬く間に大繁盛し、話題のラーメン屋となり、連日行列が絶えない店となりました。

しかし、その店には以前の常連の姿はありませんでした。贅を尽くしたラーメン、評論家に媚びたために変わってしまった店の味。店の雰囲気。それらが全て以前の常連には合わなかったのです。

あなたなら、店の繁栄のためそれまでの幾人かの客を無視し、評論家だけに媚びますか。
それとも幾人かの客のことを考えた方針をつづけますか。

オチなし

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